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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十八章 生産原価と生産技術の改善(4)部門ごとの生産性改善

農家でもゆとりを持ちたい

春になって、北海道の農作業も本格化し繁忙期が始まった。ここ最近の我が家の春は、アスパラの収穫と和牛の分娩ラッシュに追われている。ほんの1カ月前までは牛の出産もほとんどなく、情報交換の場に、技術講習会に出かけていた。慌ただしさの類が違うが、いまや一年中が繁忙期といってもいいくらいだ。
講師に招かれて私自身が話す機会も増えたが、かえって勉強になることも多く、時間が割けるのであればそのチャンスを失わないようにと心がけている。農作業に忙殺されることなく、集会のときに感じたことや気持ちの高まりを思い出して、きちんと実行に移す。春は、そうした「やる気」の漲(みなぎ)る時期でもある。
さて、農作業の合間に振り返ってみると、今年の冬に参加した集まりでは、技術習得やモノづくりへの技を極める話よりも、農業経営者の交流が目的になっているという印象を受けた。話題は当然、技術にとどまらず、老練な経営者とも世代を超えて経営の話題で花が咲いた。明日から頑張ろう、今年も挑戦しよう、あの人に追いつきたい――。なんとやる気が出る集会であったことか。
普及指導員に成り立ての約20年前は、農業者の集会での話題は技術が中心だった。新品種の栽培方法や新たな機械技術が紹介され、いま思えば戦後の食料増産期の名残を残す、隣百姓、暦百姓時代の最後だったのだろう。隣の農家が田を耕し始めたら、我も我もと耕起を始め、去年の暦を見て、そろそろ田植えの時期かなと作業の段取りをしていた。
そのころはまだ他の産業に比べると収入が少ないから、まずは暮らしを良くしようという目標が旗印だったのではないだろうか。行政や農協も技術講習会を開くなどして、面積当たりの収入増を狙って技術の普及に汗水を流してくれた。
それから時は経ち、社会は確実に変化した。端的にいえば、農業経営の事業規模は大きくなり、経営者の裁量と選択肢が大きく広がった。集まって技術のことだけを話しても、経営改善にはつながらなくなったのだ。作物の選択、販売への企画力や積極性、目標とする経営規模などでは、俗にいう多様化が進んだだろうし、農場の労働スタイルさえも変わってきたのだから。

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