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【土門「辛」聞】
性急すぎた規制改革会議の結論 代替案を示さず指定団体制度を廃止
- 土門剛
- 第141回 2016年06月02日
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指定団体制度についておさらいをしておこう。一般社団法人日本乳業協会のホームページに掲載してあった説明文を借用してみる。
「酪農生産者の多くは、農協などの組合組織に属し、農協は都道府県単位で農協連合会等を形成しています。この連合会がさらに、全国10のブロック、北海道、東北、北陸、関東、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄でブロック団体を形成しています。この10団体は『加工原料乳生産者補給金等暫定措置法』に基づき、農林水産大臣または知事から『指定生乳生産者団体』として法的に指定を受けています。乳業メーカーは、この指定団体と生乳の取引を行っています。また、この指定団体に属さない生産者もあり、乳業メーカーとの直接取引も行いますが、国による酪農補助政策等の援助を受けることはできません」
この説明を読んで脳裏をよぎったのは、集乳イコール協同組合組織なら、競争原理が働きにくいという点だった。現実に96%の酪農家は、その協同組合組織に加入。これをインサイダーと呼ぶ。残り4%の酪農家は、協同組合組織に加入せず独立して活動するが、前者との対比でアウトサイダーと呼ぶ。
協同組合組織への加入が前提のようになっているのは、酪農の特殊性に起因する。議論のきっかけとなった2015年9月11日の第25回農業WGの議論も、そのイロハの説明から始まった。農水省生産局牛乳乳製品課の森繁樹課長が次のように説明していた(発言要約)。
生乳は腐りやすくて、なかなか貯蔵するのは難しいという商品特性があるので、酪農家としては、搾った生乳をすぐ乳業メーカーに引き取ってもらわなければならない。乳価の交渉をするうえでも、非常に弱い立場に置かれている。実際に昭和30年代に酪農家と乳業メーカーとの紛争などもかなり多発したことを背景に、今の仕組みが作られた。
すなわち、酪農家は生乳を農協である指定団体に集め、団体での価格交渉を通して、指定団体が価格交渉力を強化して、乳業メーカーと対等に交渉していく。
「酪農生産者の多くは、農協などの組合組織に属し、農協は都道府県単位で農協連合会等を形成しています。この連合会がさらに、全国10のブロック、北海道、東北、北陸、関東、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄でブロック団体を形成しています。この10団体は『加工原料乳生産者補給金等暫定措置法』に基づき、農林水産大臣または知事から『指定生乳生産者団体』として法的に指定を受けています。乳業メーカーは、この指定団体と生乳の取引を行っています。また、この指定団体に属さない生産者もあり、乳業メーカーとの直接取引も行いますが、国による酪農補助政策等の援助を受けることはできません」
この説明を読んで脳裏をよぎったのは、集乳イコール協同組合組織なら、競争原理が働きにくいという点だった。現実に96%の酪農家は、その協同組合組織に加入。これをインサイダーと呼ぶ。残り4%の酪農家は、協同組合組織に加入せず独立して活動するが、前者との対比でアウトサイダーと呼ぶ。
協同組合組織への加入が前提のようになっているのは、酪農の特殊性に起因する。議論のきっかけとなった2015年9月11日の第25回農業WGの議論も、そのイロハの説明から始まった。農水省生産局牛乳乳製品課の森繁樹課長が次のように説明していた(発言要約)。
生乳は腐りやすくて、なかなか貯蔵するのは難しいという商品特性があるので、酪農家としては、搾った生乳をすぐ乳業メーカーに引き取ってもらわなければならない。乳価の交渉をするうえでも、非常に弱い立場に置かれている。実際に昭和30年代に酪農家と乳業メーカーとの紛争などもかなり多発したことを背景に、今の仕組みが作られた。
すなわち、酪農家は生乳を農協である指定団体に集め、団体での価格交渉を通して、指定団体が価格交渉力を強化して、乳業メーカーと対等に交渉していく。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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