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輸送コストについても、乳業メーカーごとに集乳を別々に行なっていると、効率的な集送乳ラインにならないので、指定団体が一元化することによって、効率的な物流を実現してきた。
それから、(生乳が)足りなかったり余ったりと、季節的にも変動するので、例えば、夏が暑くて都府県の生産が足りなくなると北海道から牛乳を運んでくるという調整を指定団体で行なっている。逆に余ったときには、脱脂粉乳・バターに加工して、生乳を捨てなくてもよいように調整もする。
以上のような機能に着目して、この指定団体が生乳を集めるということを国は補給金の仕組みを通じて支援している。
この説明は、業界用語で「一元集乳・多元販売(複数の乳業メーカーへ出荷)という表現になる。
指定団体を通じて
ゲタ、ナラシ
さて、森課長の説明で腑に落ちない点がある。指定団体を通じて補給金を酪農家に渡す合理的な根拠のことだ。この説明ではそれが理解ができない。その補給金は農水省生産局が作成した「畜産農家・関係団体に対する支援」によると次の3種類。
A【加工原料乳生産者補給金】加工原料乳(脱脂粉乳・バター等向け生乳、チーズ向け生乳)に補給金を交付。
B【加工原料乳生産者経営安定対策事業】加工原料乳の全国平均乳価が直近の3年平均を下回った場合に、その差額の8割を補填。
C【国産乳製品供給安定対策事業】国産乳製品の安定供給を図るため、指定生乳生産者団体が乳製品を委託製造する取組を支援。
疑問を抱いたのは、生産者を対象にしたAの補給金なり、Bの経営安定対策事業が、どうして指定団体を窓口にしているかという点である。よく似たものに、水田・畑作経営安定対策事業がある。これは農家が指定した口座に直接振り込まれる仕組みだ。通称Aは「ゲタ」、Bは「ナラシ」と呼ぶ経営安定対策の補助金のことだ。
そう思っていたら、東大大学院教授の本間正義専門委員が、16年3月23日の第34回会議で、その矛盾点を取り上げていた。
「今の補給金は加工原料乳に限定するにしても、農協を通さないともらえないというシステムはおかしい訳です。例えば米ですらといいますか、まだ続いている戸別所得補償、別に農協を通さなくても減反に協力していれば補給金がもらえる。政策的な誘導あるいは政策的な条件はあっても、農協を通さないともらえない補助金はほかにないと思うのです。ですから、ここは直接支払いに行くまでの間であっても補給金は個別の農家に支払う。加工原料乳であるかどうかということは受け取った側が書類で処理すればいい話です。アウトサイダー・インサイダーにかかわらず補給金を支払うようにすることは、直接支払いに移していくときのプロセスとしても期待しているのですけれども、その辺り、今の補給金制度のもとでも全員に払うということは可能だと思うのですが、どうお考えか」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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