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紙筒は5号ポット(口径5cm、高さ7.5cm)を用いる(写真9)。紙筒を展開して軽く育苗用土を投入し、50g前後の塊茎を頂芽を上にして挿し込み覆土する(写真10)。30日苗で茎葉は3~5cm上に伸びるが、これを埋め込むようにして植え付ける。専門家は茎葉を埋め込むなど論外と言うが、馬鈴薯は3日もすると茎葉は地表に出てくるのでなんら問題はない(写真11)。むしろ、10cmほど深く植え付けることによって根張りが良く、塊茎の肥大も素直である。茎葉が地表に伸び始めたら、整畦培土機で一発培土である。
この移植栽培技術の普及についていくつかの農協と相談したが、疑心暗鬼で採用する気配はない。採種農家は農協次第であり、これも動くことはないのは残念である。しかし、この移植栽培技術は都市近郊の野菜作農家が関心を示し、栽培面積を増やしている。なぜかといえば、北海道の食用馬鈴薯の出荷は5月までである。6月からは府県の馬鈴薯を食することになるが、これが同じ品種であっても気象条件の関係からあまりおいしくないと評判が悪い。7月の5日になると直売所に移植栽培の馬鈴薯が並んで評判となる。通常の倍の値段であっても、売れ行きは良い。
なお、この移植栽培技術はカルビーの創業者が興味を寄せて種々支援してくれた。移植機まで開発することができたのはそのおかげである。原料が切れるからといって工場を休ませるわけにはいかない。移植栽培はその間をつなぐ技術になると評価してくれたのである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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