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特集

農村経営者とは? 地域自立を目指す試み



[1]景観・風土・歴史・文化・食が農村の価値

いま、人々は多様なもののなかから自由に選ぶことができることに豊かさを感じる時代になった。そういう時代だからこそ、それぞれの農村にしかないものが価値として認められる。その礎となるのは、その農村にしかない景観や風土、歴史、文化である。
欧米でも戦後、日本より早く過剰の時代を迎え、農業や農村が衰退を経験した。しかしそれを乗り越えようと努め、いまは再生した姿を見せている。研究会では識者たちによって、そういった欧米の例が紹介された。
農村経営研究会のアドバイザー、松尾雅彦氏は、日本で農村を再建するために、30年後のビジョンを描こうと提唱してきた。
松尾氏の提案のひとつは、欧州のように景観の美しい農村をつくろうというものだ。そうすれば人々が訪れたいと思う村になる。欧州のいまの姿は、日本の30年後の農村の手本になるだろうという。
もうひとつの要素は、その土地で生産されるおいしい農産物で美食革命を起こすことだ。農村経営者は農産物をおいしく加工したり料理したりする人たちと組み、地域の人々がそれを日常的に食べられるしくみをつくること、ひいては、そういうものを新たに生産することを提唱している。
京都府立大学教授の宗田好史氏は、イタリアの農村がなぜ美しく元気なのか、その背景を語った。
イタリアでは、1970年代半ばからアグリツーリズモが政策として進められてきた。アグリツーリズモというのは、都会の人が農村の民泊で休暇を過ごすことだ。民泊には空き家を活用しているところが多い。あまり手を加えていないが、清潔で、アンティーク家具や民俗文化財をうまくあしらった魅力的な宿になっているという。
アグリツーリズモが成長したのは90年代のことである。その理由としては肉や野菜・ワイン・チーズなど、食事がおいしくなったことが大きい。その背景には、80年代にファーストフードへの対抗がきっかけで広まったスローフード運動がある。スローフードは地産地消と、家畜の放牧によって土壌の有機物を確保することが理念だ。おいしい、きれい、環境配慮というイデオロギーが人々に受け入れられたことで、イタリアの食文化として定着し、いまや世界中にマーケットを持つまでになっている。また99年にはスローシティ運動が始まり、農村の景観が美しくなった。農村にあふれていた都会の広告を規制したからである。
こうしてイタリアの農村は美しく、余暇を楽しむ場所になり、美食にあふれ、食文化は人々の誇りとなっていった。

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