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特集

農村経営者とは? 地域自立を目指す試み


「初年度から毎年来てくれている学校もあります。生徒のとき来て、先生になって来て、その先生の先生も同行して……師弟三代が一緒になるなんてこともありました」
リピーターの多さは、せいしゅん村の強みでもある。イベントを展開するよりも、年間通じて客を呼べる事業。それは小林さんの当初からの目論見だった。
冬場の入客の少ない時期のために、小林さんは新しいスポーツまで考案している。スノービーボールだ。雪上で行なう1チーム5人制の、ラグビーに似た球技で、高齢者でも楽しめるという。武石は雪の多いところではないが、美ヶ原まで登ればスキー場がある。
ほっとステイ事業と同種のものは、旧武石村だけでなく立科町や長和町など近隣地域にも拡がった。運営は別個だが、いずれも小林さんの働きかけとノウハウ提供の影響が大きい。

【住民の1割が関与する
村おこし】

現在、せいしゅん村のスタッフは小林さんを含めて3人。ほっとステイ受け入れ農家は、これまで100戸をゆうに超えている(常時60戸ほど)。域内農家500戸の2割以上。他の事業も含めると、全1200戸中約1割の家となんらかのつながりがあるという。まさに地域ぐるみの感が強い。
そもそも、せいしゅん村の発端からして地域ぐるみだった。ほっとステイ以降の事業でも、地元住民と一緒に協議会や研究会をつくり、企画を進めていく。2年ほど前にオープンした農家レストランやGファーム(写真説明参照)も、こうした手法で実現にこぎ着けた。
「これまでにどうにか実現できたのは、構想の10分の1ほどです」
小林さんが、せいしゅん村設立前にまとめた構想を見せていただいた。そこには清旬野菜ブランド確立、景観保全農村、桃源郷街道(山里巡り)、ともしび美術館、郷土料理レストラン、食農教育受け入れ、Iターン・定年帰農受け入れ……列記されていた構想は、農村活性化全般にわたる。ほっとステイ事業だけに特化していたわけではない。
農家レストランは観光客と農村の交流の場であるとともに、農産物の生産・加工・販売にも踏み込んだ。旧村内にはない道の駅的な機能も兼ね備えている。「農村セラピー」という一種の癒し効果を前面に打ち出した事業も行なわれている。農村の価値を見いだし、それをサービスとして提供していく事業は、これからも新たな展開を見せるだろう。
「武石で農村を活性化できないなら、全国どこでもむずかしい。やれない地域は消滅していく。そう思って、あと10年は頑張るつもりでいます。すでに後継者(現在50代)は決めています」 (取材/八木誠一)

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