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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十九章 生産原価と生産技術の改善(5)全体像から改善策を練る


孔子の論語に「子曰く、吾十有五にして学に志す、三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳順う、七十にして心の欲する所に従えども、矩を踰えず」という件(くだり)がある。私は15歳で学問を志し、30歳で学問の基礎ができて自立でき、40歳になり迷うことがなくなった。50歳には天から与えられた使命を知り、60歳で人のことばに素直に耳を傾けることができるようになり、70歳で思うままに生きても人の道から外れるようなことはなくなったという意味である。
勝手な解釈をすれば、私も40歳を過ぎたので惑わなくなってきたが、一生懸命に経営をしながら仕事をしていると、50歳くらいには何かをつかめるのではないだろうか。そういえば、日ごろ尊敬している近所の大御所に「どうしたら、そんなふうになれるのですか?」と尋ねたら、「お前も歳を重ねたら、成る」とあっさりと回答をいただいた。あまりにシンプルな回答に納得して、それ以降はあまり、経営とは何か、仕事とは何かなどと難しく考えなくなった。単純に私自身の思いを実現するために邁進することとしよう。
今回は生産原価と生産技術の改善の最終回となる。経営が新しいものを生み出すためにはそこに、何かしらの方程式があるはずである。生産性改善のテーマはその答えの一つと捉えて進めてきたつもりだ。これまで4回の内容を振り返りながら、考えていくことにする。

部門ごとでは見えない
全体像から見た課題を探れ

農業経営の形態はいまも、進化を続けている。農産物の栽培と出荷にとどまらず、直売所の運営や加工品の販売、飲食店などを営む経営も増えている。単一品目に特化した農業経営でも、ご近所や仲間の農産物を集めて委託販売を行なったり、加工流通業者やほかの品目の専業経営と提携して商品の共同開発から販売を手がけたり、経営の一翼を担う部門に成長させた経営もある。
しかし、多様化や多角化が進めば進むほど、当然ながらリスクもつきまとうことになる。部門ごとに生産原価を眺めることや、技術体系から改善策を練ることの重要性は変わらないが、経営の全体像と部門を照らし合わせて、最適解とリスク分散を考えていくこととなる。
たとえば、我が家では、アスパラと肉牛繁殖の2部門を経営の両輪に据えている。どちらかが減益しても、そのリスクをもう一つの部門で耐えようと考えてのことである。
アスパラ部門はハウスの増設による規模拡大がひと段落し、コンスタントに利益を上げてくれるようになった。現状の労働力に限界を感じる場面が増えてきたので、これからは販売単価の引き上げで利幅を伸ばす方向に注力しようと思っている。

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