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なぜかと考察すると、超高圧にすると粒子が細かくなりすぎ、ドリフト(漂流霧散)が発生し、逆に茎葉の深部にまで到達する粒子が少なくなってしまったからである。馬鈴薯の下葉が黄色くなっていたり、黒く腐食したりしていた。粒子数が多いことから防除効果はわずかでも高いと推測されていたが、そうはならなかった。動噴が使えるようになって、たまたま20キロの圧力を選択できるので20キロを標準としたが、結果としてそれが適当な圧力であったわけである。
ノズルはディスクノズルが主流であった。ヨーロッパでは薬剤の種類や生育期などでノズルを使い分け始めているという情報が入ってきた。そこで、ディスクノズルはドリフトが多いので、同じディスクでもこれを少なくできないかと検討することになった。ノズルの根元に小さな穴を空けておくと、そこから空気が吸引されて、泡状の粒子にすることができる。このフォームノズルはノンドリフトノズルと呼ばれているのでこの性能を調査してみることになった。
農家はほとんどドリフトがないことに驚き、調査結果も出ないうちからこれを使い始めた。ドリフトがないことは、散布した薬剤に無駄がないことであると考えたのである。しかし、なかに慎重な農家がいて、ブームの半分をフォームノズルにして1年の結果を比較してみようとした。最初のうちは差は認められなかったが、回数を重ねていると、殺虫剤の効果はやや優っているが、殺菌剤はやや劣ると報告してきた。行って調べてみるとそのとおりである。粒子が泡状になると、中に大きな泡になるものがあり、均一にまんべんなく茎葉に薬剤が付着するものではなかった。殺虫剤、あるいは除草剤については問題なしとしても殺菌剤についてはやや問題ありと考えられた。写真3・4は秋播き小麦の雪腐れ防除でディスクノズルとフォームノズルで効果を比較したものである。越冬して春に効果を調べてみると、ディスクノズルはドリフトがあったが、効果は明らかに優っていた。見かけだけで結論を出してはいけない一つの経験であった。
その後、TeeJet社製のノズルなども市販されるようになり、農家は殺菌剤、殺虫剤、除草剤の効果をいかに発現させるかについてノズルの選択に留意するようになった。この場合、ノズルメーカーの宣伝文句をそのまま鵜呑みするようなことはなかった。なぜかといえば、宣伝にオーバーな表現がないわけではなく、また年間を通しての試験をして、その結果を示していることは少ないので、自分で確認する必要があったためである。いずれにしても、単一ノズルの時代は終わり、複数ノズルを使う時代になって防除効果は高まってきている。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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