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北海道馬鈴薯でん粉物語

トラクター営農時代を迎えての馬鈴薯栽培に関する農業機械の開発改良技術 茎葉処理機


さっそく圃場実験してみると、細かい粒子を作ることはできたが、ドリフトはそれほど少なくできなかった。空気量を多くしても、馬鈴薯の茎葉の中に粒子がすべて吹き込まれることはなかった。防除効果を調査してみると、殺虫剤は比較的良好な結果を得られたが、殺菌剤については、下葉まで粒子が到達していないので、合格点には達しなかった。
ブロアーを搭載し、別にエア・アシストする方法を検討すべきとされたが、構造が複雑になるという理由で採択されることはなかった。水稲は航空防除法が成立しているのに、なぜ畑作ではそれができないのか論議になった。水稲は禾本科で元来、病害虫の少ない作物である。また、茎葉の量も少なく、生育相も薬剤が進入しやすい状態になっているので、畑作物とは比較にならないのである。
事実、水稲も畑作と同じくブームスプレーヤーで省力的に、精密防除をすべきとされ、自走式田植機の動力部を活用してブームスプレーヤーを組み立てたが、20リットルの量でも防除効果にはまったく問題はなかった。水稲栽培農家はスプレーヤーが圃場に入れば、株が踏み付けられると当初、容認しなかったが、航空防除よりも水量が多く、またノズルが各条の上にあって近い位置から噴霧するので効果的であるのがわかり見直された。枕地回行などで踏み付ける割合を調査してみると、3%程度のことであった。精密防除によって増収することを考慮すると、水田にブームスプレーヤーを使わない理由がなくなった。畦畔からの鉄砲ノズルによる防除よりもずっと省力的であり、現在ではブームスプレーヤーでの20少量散布の時代になっている。
水田で少量散布が成立していることから、畑作で再度挑戦してみることになった。ノズルを改良し、ポンプを使った防除である。結果は表1・2である。前回よりもだいぶレベルアップしているが、やはり慣行の100リットル防除には及ばなかった。疫病の発病度、収穫物のライマン価(でん粉含量)に明らかな差があり、とても推奨する技術にはなり得ないと判断された(図1)。さらなるノズルの改良、エア・アシストの方法を改善することで、内容をもっと充実させることはできるとしても、実用化は非常に難しいといわざるを得ない。少量散布技術は畑作から始まり、水田で成立させているので、半分は成功している。一応、努力は報われていると評価してよいであろう。
なお、我が国では希釈倍数を指定しているが、散布水量は任意にしている。作物の生育初期は茎葉量が少ないので、当然のことながら散布水量を少なくし、生育が進むにしたがって多くするのが通例である。生育後期に散布水量を多くすれば、薬量も多くなるわけで、茎葉量に応じた薬量になる。根菜類は茎葉量が多いので、茎葉量の少ない小麦や豆類より散布量を多くしているのが普通である。また、常に作物の生育相や気象条件を勘案して散布水量を決定している。考えなしで防除すれば無駄が多くなり、防除効果も劣るので農家の力量が問われるところである。

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