ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

新しもの好きのネットワークを広げ、農業を楽しむ革新者

全国のセブン-イレブンの店舗に並ぶポテトサラダ。その原料となるジャガイモの生産者の一人が細川幹生だ。Facebookを通じて農場の様子を発信することで、他県の店舗スタッフと交流を深め、お客さんに自らポテトサラダをPRするのに一役買っている。新しもの好きは類が友を呼ぶがごとく、情報をつないでいくようだ。農業者同士に限らず、広がる人脈が心の糧に農業をいかに楽しむか。その秘密をひも解いてみたい。 文/加藤祐子、写真/細川幹生

コンビニのポテトサラダを
農家が熱心に宣伝する理由

全国に展開しているコンビニエンスストア、セブン-イレブンの棚に並んでいるポテトサラダ。今回の主人公はその原料となるジャガイモの生産者のひとり、(有)ほそかわ農場の細川幹生だ。北海道のジャガイモ農家が、Facebook等でセブン-イレブンのポテトサラダを宣伝する。一般的には「生産して出荷すれば終わり」という発想がいまだに大勢を占めるオホーツクの畑作農家の中では、異色の存在である。
ポテトサラダの製造元は、静岡県に本社を構える(株)ヤマザキだ。同社は、セブン-イレブン・ジャパンの井坂隆一前社長が営業マンだった頃より、一心同体で商品開発を進めてきた。ポテトサラダは真空パックに梱包した形で、プライベートブランドの「セブンプレミアム」の商品として好評を博すことになる。静岡県内の工場では生産が追い付かなくなり、新たな生産拠点を北海道へという話が持ち上がった。原料の輸送を簡便に進めるためである。青果流通業を営んでいた細川の弟、靖夫氏が新工場の立ち上げに際してコーディネートを担当したことが、ご縁の始まりとなった。
新工場の1日当たりの処理量は約20t。数ある産地のなかからジャガイモの栽培により適した地域のものを使いたいという同社の意向から、名寄やオホーツクエリアに声がかかったのだ。細川を中心に北海道津別町の5軒の農家で、工場で加工処理される約2カ月分に相当する1200tのジャガイモを納入している。そのうち、細川が生産しているのは約700t、1.5t載せられる金属製のコンテナに換算すると約450基に相当する。 
春の圃場づくりから植え付け、最後の収穫作業までの風景を写真に撮り、細川はFacebookで農場の様子を発信している。一般的には、どのようにジャガイモがつくられるのか、そこに興味を抱く人はそう多くはないかもしれない。しかし、「北海道」に幻想を抱く府県の人々にとっては、ポテトサラダから細川の写真にたどり着いた人もいる。日々更新される写真を楽しみに思うファンができたこと、そのつながり自体に細川は生産活動だけでは得られないおもしろさを感じている。

関連記事

powered by weblio