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特集

根深い農産物貯蔵施設問題 ハコモノに巣食う利権

問題は「系統慣習的分離発注方式」にあり
海外のグレイン・ビンに目を付けた先駆者たち
流通のつなぎ目=貯蔵施設から変わる、変える
その補助金は目指す経営に合っているか

子実トウモロコシの国内生産に対して、畜産分野だけでなく食品その他の部門でも需要があることはこれまでの我々の活動でわかった。しかし、その大規模貯蔵設備がないことが生産拡大を阻むボトルネックになっている。
そこで、この特集では穀物貯蔵設備にとどまらない補助金利用の問題点を、自己資金で各種施設を建設した農業経営者や関連事業者の話も聞きながらその問題点を取り上げた。
生産者の身の丈に合わないのはもちろん、農協が補助金を使って建設しても高い利用料が組合員である生産者にじわじわと降りかかってくる。 “補助金があるんだからより高価に”という風潮さえ広がっている。危機感は募るばかりだ。

日本で4億円の建設費がかかる貯蔵庫がヨーロッパでは1億円
問題は「系統慣習的分離発注方式」にあり
山木 茂(仮名)

本特集はこの記事の筆者との情報交換に端を発している。農業施設、わけても農産物貯蔵施設は一年に一作しか収穫できない農産物を長期間有利に販売するための農業のインフラというべきものであるが、この施設建設に絡む根本的な問題点とは、いったいなんなのか。(編集部)

一昨年来、公正取引委員会が踏み込んで、北海道において野菜貯蔵施設の建設に絡む談合についての厳しい指導が行なわれてきた。表面上悪しき慣習がこれをもって払拭されたかのように思われたとしても、その本質的な問題の解決には、残念ながら極めて程遠い内容でしかないと総括できるであろう。
このような談合体質を助長し、農業の発展を遅らせ、補助金本来の農業の発展に寄与するという目的達成を阻んでいるものは何か。
それは一見公の立場からすると公明正大な手続きであるとされている、設計と設備および建屋の施工を別々に発注する分離発注方式にあると断言できよう。
農協が農産物貯蔵庫を建設する際、今日までの慣習的な方法は、経済連や全農などの息がかかった設計事務所が図面を引き、その図面に基づいて施工業者が入札するという方式が一般的である。施工管理を行なう事業主体を入札で決める実例はあっても、設計事務所を入札方式で決める例はない。ほとんどが随意契約になる。
設備と建屋とを別々に分離発注するのが普通だが、これを「系統慣習的分離発注方式」と呼ぶことにする。この方式についての問題点を筆者は以下のように整理している。

【なぜ「分離発注」を見直すべきなのか】

(1)業者と設計者との癒着可能性
設計段階で競争原理が働かず、設計内容についての経済性や性能の妥当性の検証が極めて不十分である。一般的に言って、設備や建築についての技術やノウハウは設備業者や施工業者が所有しているのが普通である。設計者が技術やノウハウをきちんと理解し、業者から独立的に図面を起こせるのならば、設計の独立性と透明性は十分に確保できるが、実態はまったく違う。設備業者や建築業者からのノウハウの提供がなければ、図面すら引けないのが実情であり、場合によっては業者にすべて図面を引かせ、名称だけ変えている例も珍しくない。ここにおいて業者と設計者との間の癒着の可能性をまったく排除できない。

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