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特集

根深い農産物貯蔵施設問題 ハコモノに巣食う利権


ここで「強い農業づくり交付金」に注目してみよう。目的は、(1)産地競争力の強化、(2)食品流通の合理化である。
(1)のなかには、集出荷貯蔵施設や乾燥調製施設を含む事業メニューが列挙されている。補助の対象となるのは総事業費5000万円以上で、補助は2分の1以内、上限は作物や施設ごとに別途設定されている。
仮に、経営規模に合った施設を見積もったとき、2500万円以下だったとしよう。自腹金額が同じなら、いっそ5000万円の施設にして半額の補助を受け取ったほうが得に見える。しかし必要以上の規模の集出荷貯蔵施設を建ててしまえば、固定資産税、照明代、メンテナンスのランニングコストは経営の負担となる。

【フレキシブルな経営転換のために】

簡単な話なのだが、実際に、補助事業で大規模な施設を建てたが、作物が半分のスペースしか埋めていない、半分の設備しか稼働していないという話が聞こえてくる。ある経営者によると、必要な規模の倍の大きさの施設を建設すれば、年間のランニングコストが2~3割上がってしまうだろうという。補助事業の名称は変わっているが、かつて同じ事業メニューを使い、県レベルで再編した事業者が約10年後に倒産した例もある。
また、(1)産地競争力の強化において、集出荷貯蔵施設の対象作物が制限されている。「りんご」「なし」「かんきつ」のほか、「野菜:きゅうり、なす、トマト及びピーマンに限る」といった具合だ。これでは露地栽培であれば連作障害が起きてしまうばかりか、市場の動向に合わせて品目を転換するという経営転換ができない。
実際に、補助事業で設備を導入したが、その作物が売れずにほとんど設備が使用されていない例もある。
ある経営者によれば、補助事業を受けることによる弊害は多い。生産する作物が制限されたり、汎用性のない専用設備を導入せざるを得なくなったりする。そのため、市場に合わせて作物を切り替えたり、状況を見てタイミングよく施設や設備を増やしたりという経営ができなくなるのだという。
補助金を使うのなら、目指す経営にとって本当に有益なものかどうかチェックしてからにしたい。(編集部)

農産物貯蔵庫に関する農林水産省の補助事業

◆強い農業づくり交付金 28年度予算
国産農畜産物の安定供給のため、生産から流通までの強い農業づくりに必要な共同利用施設の整備等を支援。
◆強い農業づくり交付金(果樹・野菜・花) 28年度予算

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