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(7)自立できない農協
農協は、設計を経済連や全農などに任せてしまうことで、せっかくのノウハウの学習機会を逸してしまい、いつまでも自立体質を醸成できない。
(8)管理が複雑・あいまいに
事業に関与する主体が、設計者・建築施工業者・設備施工業者・施工管理者と多岐にわたる。農協は経済連や全農に設計管理を一任して事業を進めると言いながら、所詮同じ組織ではないので、事業運営での管理や意思疎通を複雑、あいまいにし、かえって管理を難しくしている。
(9)異常な高コスト
世界の貯蔵庫建設の実態と比較しても、大した性能でないにもかかわらず、日本の農協の建築している野菜貯蔵庫のコストは異常に高い。欧米との価格差は4~5倍にもなる。日本が地震国であるなどのマイナス要因を考慮したとしても、系統慣習的分離発注方式が業者などとの癒着を排除し、十分に経済性追求に寄与しているとは到底考えられない実態がある。
国の借金が日増しに膨らむなか、税金の効率的な使用が求められている。このような世界にも類例のない異常な高コストの実態が系統慣習的分離発注の下で行なわれてきたという事実は、その方式自体に問題があることの端的な証拠である。
(10)高コストをもたらす補助金
TPPの時代に農業は、新しい技術と経済性をいままで以上に高めて競争力を強化していくことが求められている。競争する相手国と比較し、地域性をいかに強調しようとも、競争力強化のために使用されるべき補助金が、かえってコスト高を招く実態となっているようでは農業強化のための補助金とはまったく名ばかりのものといえる。これこそがいままでの慣習的な入札方式などを根本的に見直すべき理由である。
以上のように、系統慣習的分離発注方式は、上位系統組織と業者との癒着を促し、新技術の積極的な採用の障害となっている。結果的に、設計から施工に至るすべての段階での業者の経済性追求を妨害するとともに事業管理を複雑化させ、不必要にコストの高い貯蔵庫の建設をもたらすだけではなく、税金の無駄遣いに加担し、農協の経済的、技術的な自立を阻害してきたことは明らかである。
ひとつ実例を紹介する。これは北海道での設計施工入札事業の実例で、系統慣習的分離発注を推奨した経済連の提出した見積価格は4億円であったのに対して、設計施工競争入札で落札した業者の見積もり及び落札価格は2億円であった。しかもなお、同レベルの貯蔵庫のヨーロッパでの標準的なコストは1億円であり、設計施工入札の実施によって半額補助とは言いながら、補助事業で欧米並みのコスト実現にこぎ着けており、補助金が国際競争力の付与にまさしく貢献した実例として評価できる。
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