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特集

根深い農産物貯蔵施設問題 ハコモノに巣食う利権



【設計施工方式の入札が唯一の活路】

最後に、対策について述べたい。
現代は建築設計事務所にとっては不毛の時代である。古い時代であれば、顧客も大工も建築に対して十分な知識を持っていないので、建築の専門家である建築士に設計と施工管理を頼むことは良い家を安価に手に入れるうえではよい方法とされたであろう。
しかし、時代は変わって、日々技術が進歩して、施工方法も材料も長足の進歩を遂げるようになってくると、個人の建築士の持っている情報量や経験では追いつかない時代に入ってきて、建築士の書く図面は施工面的にも材料面的にも経済的競争力を失ってきている。住宅の世界では、工務店での設計施工が当たり前になり、建築士はインハウス建築士として働かない限り、食べられない時代に突入している。今後この傾向はますます先鋭化するものと想定され、設計施工で総合力を発揮できない建設業者は建築士とともに急速に淘汰されるであろう。
このような時代背景において、設計と施工を分離することが経済的であり、公明正大な入札方式であるとするのはあまりに時代遅れといえるであろう。
分離発注方式同様、設計施工入札方式は公共の事業の発注方式として公に認められた公明正大な発注方式である。以上のような問題を克服して事業透明性を確保するには、設計施工コンペによる入札方式の採用以外に方法はないと考える。
設計施工コンペによる入札方式は、設計段階からコストと性能の追求を業者に強制し、業者と設計主体・事業主体との癒着の機会を排除するものである。また、事業目的に対する責任の所在を明確にし、競争入札による透明性を確保するのみならず、農協の経済的、技術的自立を促すうえで、最適な入札方式であることは明らかだと思う。
一部には設備は業者でなければ設計施工ができないが、建築ならばどの建設業者にできるという声があるが、これは先ほどの時代の流れを考慮しない田舎者の認識である。
東京オリンピックの国立競技場の1次設計コンペでは結局、コスト的に実現不可能な設計が採用されて、税金をドブに捨てるようなお粗末な結果になった。一流の設計事務所ですらこのような事態が起きる。設計の段階から施工に詳しい建設業者と組んだ設計施工入札方式であったら、予算的に実現不可能なデザインが採用されるような事態は起きなかったであろう。
そして、皮肉なことに2回目に行なわれた国立競技場のコンペでは、最初から施工企業が設計者と組んだ設計・施工の一括公募で行なわれることになった。この税金をドブに捨てた醜聞事件の最終的な結末こそ、設計と施工の分離発注そのものが問題であることを端的に表している事例と言えよう。(寄稿)

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