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仮に利用できたとしても、使い勝手が悪い。その意味で、野菜の真空貯蔵施設にしろ穀物の乾燥貯蔵施設にしろ、農協の施設は使えないものが圧倒的に多い。
なぜ使いにくいのか。我々の事業目的に沿ってつくられた施設ではないからだ。
自分たちが管理しているわけではないので、倉庫の中に何が入っているかわからない。たとえば、DNA検査をすると、貯蔵すべき作物以外の成分が残留している可能性だってありうる。そのぶん、販売責任などリスクが高くなるわけだ。
本音をいうと、貯蔵施設は自分たちでつくりたい。そのほうが稼働率を上げられるし、減価償却も圧縮会計などせずスムーズにいく。
まずは目的を明確にして、必要なものだけそろえる。余計な設備はコストを押し上げる。デジタル管理しなくてもいいシーンなら省いてもいい。逆に、必要なものは設計段階で導入する。たとえば、フォークリフトの高さに合わせて庫内設計するとかだ。
もちろん、出荷頻度や数量もしっかり織り込んでおく。季節ごとの変動も考慮しておく場合もあるだろう。
建設にあたっては補助金はもらわずに済ます。もらえば縛りがきつい。用途も限られる。事業目的の遂行に支障を来たすようでは、意味がない。
使う側の意思が明確なら、オプションをつけたとしても絶対安くなる。3割以上、場合によっては半額。しかも使いやすい。建設費だけでなく、運用コストの面でも影響は大きいと思う。なかば前例踏襲、一定の基準にこだわりすぎず、生産者の意思や経験で培われたノウハウを反映させることも大切になる。
【商品価格を左右するトランザクション
いまなぜ農産物の貯蔵施設が変わらなければならないのか。それは流通におけるトランザクション(結節点、切れ目)だからだ。コストの多くは、このトランザクションで発生する。そこに流通施設が持つ重要な意味がある。貯蔵施設が変われば価格も変わりうる。
貯蔵施設の建設費や運用コストが高ければ、結局、商品価格に跳ね返る。すると、実需者や消費者は高く買わざるを得ない。つまり、貯蔵施設が高コスト体質であればあるほど、不利益を被る羽目になってしまう。
高コスト体質をもたらす要因のひとつが補助金である。補助金が高コストを助長している。農家の所得を上げるとか、産地競争力の強化といったタテマエのもとで、必要以上の高スペックが導入されたりするケースも見られる。
じつは補助金を期待しているのは農業者だけに限らない。むしろ、施設建設や設備を納入する組織=売る側である設計会社や建設会社、備品メーカーである。こうした組織のために補助金が支出されているといってもいいほどだ。
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