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成田重行流地域開発の戦略学

熊野街道を活かす 三重県尾鷲市


そうやって集落の魅力が発掘され、それを見聞きしたり味わったりするウォーキングコースが誕生していく。一連のコースは日本ウォーキング協会に申請して認定してもらい、全国に知れ渡ることになった。
とはいえ、そうしたウォーキングコースはこれまで住民たちから見向きもされなかったものがほとんどで、草木が茂っていたり路面が壊れていたりしていた。その整備に尽力したのは有志の住民たち。それぞれの地域の人たちが鍬(くわ)や鎌を持ち出して草刈りをしたり、花を植えていったりしたのだ。
その陣頭指揮を執ったのは県立高校国語科の元教師である川端守さん(75)。川端さんは山登りの趣味が高じて、その趣味を持った人の集まりである「東紀州テン・マウンテン」の会長を務めている。このメンバーが核となって、コースの景観を整えるのに精を出したのだ。

巡礼路の歴史をたどり
スペインへ

なぜ地域の住民たちが熊野街道の整備に動き出したのか。そこにはそれぞれの思いがあるだろうが、ひとつ挙げられるのは川端さんが熊野街道の意味を伝えたことが影響している。
川端さんが熊野街道の持つ意味をより深く知るようになったのは2006年。妻の美智子さんとともにこの年、「道」としては初めて世界遺産に登録された、フランスからピレネー山脈を経由してスペインに至る800kmの道「サンディアゴ・デ・コンポステーラ」を踏破した。熊野古道の世界遺産登録から2年後のことである。
そこを歩き始めて気づいたのは、サンディアゴ・デ・コンポステーラが熊野古道と同じく巡礼路であること。また、巡礼者が歩けるのは平和だからということ。加えて道沿いの集落の住民たちが巡礼者を迎え入れるべく道を整備していることだった。
たとえばこの巡礼路には簡易宿泊施設「アルベルゲ」が点在する。川端さん夫婦は事前に宿泊先をほとんど決めずに旅路に出たため、一定の距離ごとに用意されたアルベルゲには助けられた。しかも価格は「ゼロから8ユーロ」。つまり高くてもせいぜい1000円程度なので、長期の旅行者にはありがたい存在である。

熊野古道の旅人を迎える
日本版「アルベルゲ」

翻って、熊野古道は峠道こそメンテナンスが行き届いているものの、そこから外れた道は旅人を迎え入れるために手入れがされているわけではなかった。ただ、巡礼できるのは平和だからこそである。そうした時代に多くの人々が訪れるのであれば、何か新しいことができるはずだ。

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