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帰国後、川端さん夫婦はサンディアゴ・デ・コンポステーラを踏破したときの体験や教訓を尾鷲の人たちに伝え、まずは旅人が熊野街道を楽しめるよう道を整備することから働きかけた。それと同時に熊野古道有数の人気スポット「馬越峠」に向かう入り口近くに「日本版アルベルゲ」を開業する。その名も「山帰来(さんきらい)アルベルゲ」。同じ敷地内には「山の喫茶」もある。アルベルゲでは自炊できるが、必要とあれば「山の喫茶」で朝夕に食事を摂ることもできる。
「馬越峠」の付近は多くの人が歩きにくる場所ではあるのに、驚くことに「山帰来アルベルゲ」ができるまで、簡易宿泊施設は存在しなかった。「山帰来アルベルゲ」は一泊の値段が素泊まりで4000円というから旅人の懐には優しい。おまけに川端さん夫婦に触発され、別の住民がもう少し高台にも簡易宿泊施設を建てるなど波及効果も出ている。
筆者と一緒に「山の喫茶」の素敵なテラスで以上のような話を聞いた成田さんは、「川端さんくらい深掘りをして、意味を見極める人はなかなかいない」とうれしそうに語った。それというのも、川端さんは成田さんの地域開発理論のまさに体現者であるからだろう。
成田さんが地域開発で最初に取りかかる三つのことのひとつに「根っこ探し」がある。地域の歴史や文化を探ることだ。川端さんは、サンディアゴ・デ・コンポステーラを踏破することで、巡礼路の歴史や文化を深く理解し、それによって熊野街道の価値を再発見したのだ。そして集落の仲間とともに新たな誘客産業を興していった。その力強さに筆者も心を打たれた。
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