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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第二十章 投資の心構え(1)投資と消費は似て非なるもの


しかし、現在もイギリスの財政は、とくに良いとは思えない。生産財の輸出も品目は限られ、どちらかというと輸入国であろう。EUという大経済圏から離脱するのだから、EU以外に有利な経済の後ろ盾を見つけたのかと憶測してしまった。もし、アジアの大国が、経済の後ろ盾だったらとしたら――。EUの玄関口としてイギリスに拠点を持つ日本企業は、その拠点に重要な役割と機能を持たせているようだから、戦略が外れることになるかもしれない。
このたびのEU離脱の一件を受けて辞職したキャメロン前首相に代わって、誕生したのはサッチャー以来の女性首相だ。これからどのような手腕を発揮するのか注目したい。マーケットは敏感に反応したが、日本の経済にあまり大きな影響が出ないことを祈る。ユーロ安で欧州の農業機械が少しでも安くなると、投資のチャンスにはなるのだが。

投資と消費は似て非なるもの

さて今月からは、投資について改めて考えていこうと思う。一般的に、経営における投資とは、生産性を高めて効率よく大きな利益を得る目的で、新たに資本(人・物・金)を投じる行為と理解している。広く捉えると、生産にかかわる人への教育も投資に該当するだろう。
農業経営における投資を具体的に考えてみると、労働の時短や作業の最適化を目的とした高馬力トラクターや高能率の作業機への買い換え、経営者の情報収集や従業員等の研修などが投資の一手に挙げられる。農地の基盤整備や農舎の改修工事なども、目的によっては投資になる。しかし、単純な機械の老朽化による更新は、投資とは呼べない。利益増につながるか、生産活動が増大するか、その目的が明確なものだけが投資になる。
では消費と投資は何が違うのだろうか。同じ里山に暮らす桃太郎、一寸法師、金太郎が繰り広げる経済活動を事例に説明してみたい(図1)。
まず、右側の消費の話から始めよう。桃太郎が一寸法師から10円を借りる。桃太郎は借りたお金で、金太郎に10円分のきび団子の生産を依頼する。金太郎は山の仲間に原材料を集めさせて、きび団子を作って依頼主である桃太郎に渡した。金太郎は代金として現金10円を受け取り、大切に切り株の穴に貯金した。桃太郎はきび団子を家来に与えた。
この一連の行動を経済として複式で帳簿記載してみよう。キャッシュフローを除くと、一寸法師は10円の貸付金(債権)、桃太郎は10円の借入金(債務)、金太郎は10円の売上(貯蓄)が発生しているが、3人の合計の資本総量は最初と同じだ。原材料からきび団子が生産され、商品として付加価値が生まれたが、桃太郎の家来が食べてなくなった。これは経済でいうところの消費である。

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