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反対に、ドイツではイタリア料理店が増えた。90年代半ば以降だろうか。それまでのドイツ料理といえば、あのワンパターンのソーセージなどが定番だった。豚肉料理を食べ飽きて、街歩きで見つけたイタリア料理店に入って、胃袋がホッとした記憶がいまも鮮明にある。
産直市場も単一市場になった。南ドイツのミュンヘンにあるビクトリエン・マルクトと呼ぶ野外の産直市場だ。観光スポットになっている旧市庁舎前のマリエン・プラッツに隣接している。最初は、近隣の農家が野菜や果樹、チーズやワインなどをミュンヘン市民に売っていた。開設は1807年というから、200年ちょっとの歴史がある。ビクトリエン・マルクトが、観光スポットに生まれ変わったのは、10年ぐらい前。売り手が近隣農家だけではなくなった。国境を越えてオーストリアやイタリアの農家も利用。EUでは、産直市場も単一市場の恩恵を受けていることになる。現に、チロル地方の農家は、チーズなど酪農製品やリンゴなどを売りにきている。
筆者は、このビクトリエン・マルクトが大好きで、ミュンヘンを訪れるごとに足を向け、土産物を買う。今回も、テーブル・オリーブと呼ぶオリーブの塩漬けをどっさり買った。売り場の主は、ドイツ語に訛(なま)りがあるのでドイツ人でないことがすぐ見抜けた。「どこから来たか」と質問すると、「南チロル」。アルプスの南側、イタリア北部のことだ。本場オーストリアのチロル地方の南だから、こう呼ぶ。ミュンヘンから距離わずか230km、高速道路をすっ飛ばせば、2時間ぐらい。
EUが単一市場の創設に踏み切り、国境や税関がなくなり、EU域内の市民は、域内で自由に商売ができる。これこそEU創設の原点のような話が身の回りにもあるのだ。
ざわめきが続く
ドーバー海峡
ロンドンからパリへは、ドーバー海峡のフェリー便を使った。飛行機やユーロスターなら2時間ぐらいだが、フェリー便は半日以上もかかる。フェリー乗り場のドーバーには、ロンドンのセントパンクラス駅から電車で2時間ぐらいで着く。ドーバー海峡は、晴れた日には34km対岸のフランス・カレーの崖が見える距離だ。
このルートを利用したのは、2003年に次いで2回目だった。カレーとドーバーは、英仏両国にとって国境の町になる。EU域内は、原則、国境でのパスポート・チェックは不要になったが、英国は例外。いまだに国境管理を厳しくしている。難民や不法滞在の移民対策のためだ。ドーバーのフェリーターミナルでは、昔ながらの入国審査官によるパスポートのチェックがある。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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