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イベントレポート

地域の食文化を再発見して生かす 農村経営研究会 2016年第3回定例会


講演で紹介された多くの事例のなかからコメのブランド化にかかわるエピソードをいくつか紹介したい。
最初に訪問した千葉県香取市で受けた相談は、ある農家からコメを直接消費者に販売したいがどうすればうまくいくかという内容だった。ここでの金丸氏の提案はこうだ。
「おいしい」とか「環境に優しい」といった言葉は抽象的で伝わらないため、千葉県では絶滅危惧種とされていたメダカを水田に取り戻すという活動を興し、話題づくりをすることにした。そして、メダカが戻った水田から穫れたコメに「めだか米」と名付けて販売する。めだか米は東京で1俵(60kg)4万円の高値がついた。
生き物が棲む環境を取り戻した事例はほかにもある。宮城県大崎市(旧田尻町)は冬場の水を張った田んぼを白鳥などの渡り鳥の飛来地にしようという試みを推進している。近くにラムサール条約に指定されたことで国際的に注目を集めた伊豆沼などの沼がある。当初は渡り鳥の飛来が鳥害になると反対の声もあったが、地域のはずれの水田で試したところ、翌年には白鳥が飛来。その水田で収穫したコメを「白鳥米」として販売すると1俵4万円で完売したそうだ。欧州の環境保全を目的とした補助金に倣い、冬期湛水と農薬・化学肥料を使わない農法に協力する農家に対して最大2万7000円/10aの交付金が整備されている。
兵庫県豊岡市はコウノトリを戻すというプロジェクトの実践地だ。東京では新潟県や山形県のブランド力にかなわない。そこで、ターゲットを女性に絞ることを思いつく。彼女らのもっぱらの関心事はダイエットと美容だ。販売する際のキーワードに「ビューティー」「ヘルシー」「エコロジー」を選び、コメを食べることによって美しくなり、社会に貢献するという意味を込めた。女子大の講師を務めた経験が役に立った。
この事例では、農業者らに協力を仰いだ。コメの栄養バランスやほかのコメとの粒感や香り、甘味といったデータに加えて、コウノトリが飛来するという栽培環境のことや、コウノトリはどんな餌を食べているのかを説明する冊子をつくってもらったのだ。コメと一緒にセットで販売したところ、コメの売り上げは5倍になった。このやり方は佐賀県や長崎県、大分県でも展開している。
いずれも、自分たちの食べものがいったいどこから来ているのかを知りたい人たちとのかかわりが成功の秘訣になっている。

地域づくりで大切な5つのこと

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