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【新・農業経営者ルポ】
経営者は数字に強くなければならない
- (有)大牧農場 代表取締役会長 五十川勝美
- 第146回 2016年09月16日
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複式簿記がすべての基本
事務所に通され、挨拶もそこそこに、着座して録音機器のICレコーダーの録音ボタンを押すと、五十川のこんな第一声が入っていた。
「作物は天候でぶれて取れない年もありますよね。でも、大豆だったり、小豆を使った商品の最終価格ってまず変わらないじゃないですか。おかしいよなと思って自分で計算してみたら、商品価格に占める農家の手取り額は7%しかいただいていなかったんですよ。これでは農家は苦しいですし、安定しません。私が経営を意識しだしたのはそんなことを考えてからです」
入植二代目の五十川は馬耕を体験している。食うや食わずの農家からはい上がったのは時の池田勇人首相が「所得倍増計画」を打ち出してからだという。66年には初めてトラクターを購入し、本格的な機械化農業に移っていった。
そのころ、習得を目指していたのが複式簿記だった。学生時代、数学の方程式が好きだったというが、こちらはそう生易しいものではなかったようだ。
「単式簿記では12月になって足りないなんてことがあって、複式簿記の重要性はわかっていたんです。でも、最初は理解できずにちんぷんかんぷんでした。それから冬に農協関係の学校で1カ月間、講習会を受けるんですけど、さっぱりダメで……。ものにできたのは自分の経営をやりながら取り組んでみてからですね。これでお金の流れも経営の流れもつかめました。いままで資金繰りもいろいろしてきましたけど、この複式簿記がすべての基本です」
もともと数字に関心の高かった五十川がこうして複式簿記の技能を手にした。やがて30代後半で産直に出会って業容が拡大していくと、そのスキルはいかんなく発揮されていくことになる。
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五十川勝美 イソカワカツミ
(有)大牧農場
代表取締役会長
1947年、北海道音更村(現・音更町)生まれ。中学卒業後、通信高校に通いながら家業の農業を手伝い、そのまま就農する。自身の農場の(株)イソカワファームと、3戸の農場からなる集出荷組織の(有)大牧農場で代表取締役社長を務めた。
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