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高見澤 そうですね。農家は代々、土地を守らなくちゃいけないといいますけど、国有の農地ですから、そこで農業をやる人間がすべて後継者と考えてもいいのかなと思っています。ある意味、私みたいな束縛のない人間の考えることかもしれませんが……。民間の会社なら、最初に立ち上げても上場したら社長は変わっていきますよね。それに比べて農業は後継者、次の後継者と引き継いでいて、農家は変わりません。
昆 いってみれば、農業界では資産や財産を相続する話になっていて、事業の継承は必要なんですけど、それすらも、もしかしたら宝くじに当たってその農地がショッピングモールになるかもしれないというところまで継承するというのが、恥ずかしながら大多数の日本の農民の本音だったわけです。農業界では美しいストーリーで語り続けていますが、それはウソばっかりと私は言い続けてきました。一方で、後継者という意識もなかった高見澤さんは、農業をやる前のクリエイターの仕事を選ぶ過程でも、給料が多いとか、遊べるかとかまったく考えなかったんでしょう?
高見澤 考えなかったですね。
昆 大変か大変じゃないか、儲かるか儲からないかではなくて、動機はなんだったんでしょうか?
高見澤 何かを創り上げたかった。何か行動を起こしたかった。シンプルにそれだけだと思いますよ。何も考えずに、そのときに与えられたものをまずやってみようという気持ちを持って、360度アンテナを張って、ピンと来る「点」が見つかった途端にそこにグッとのめりこんでいくという生き方をしてきたんだと思います。あのときに余計なことを考えていたら、たぶん農業も、トマト栽培も始めていないですね。
【農業という仕事を借りて
人生という作品を作る】
昆 CMの世界に居続けていたら有名なクリエイターになったかもしれないのに、なぜ農業に?
高見澤 広告制作という仕事は、その会社の商品が売れるために知恵を絞りだしているわけでしょう。それなら、もっと人生とか、生きることとか、食品を作り出すことのほうが、本当の意味でのクリエイターではないかと思いました。それでたまたま農業という仕事を借りて、自分の人生を歩くことになったんです。
昆 トマトもそうかもしれないけれど、この農場をつくるという困難にチャレンジしていく自分の生き方が作品になっていて、それをつくっているクリエイターとしての己に気づくことが喜びになると。
高見澤 私はそれを自己満足でやっているわけです。
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