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「4000社の工場を訪ねたという著者の現場感と実体験に裏打ちされた言葉の力強さに心がつかまれました。読み終えた瞬間に僕は外に飛び出していました。『現場に行け』と、僕の人生を左右するメッセージが書いてあったので」
恐れ多くも町工場を訪ねてみたところ、思いのほか受け入れてもらったという。この金属は軟らかいが、こっちは硬い。熱を加えて硬くしたり、軟らかくしたりする。1mm以下の世界は高垣にとって衝撃の連続で、工場を訪れるたびにそれぞれの技術がおもしろかった。さらに東京のほかの地域の工場集積地を回り、関氏の勉強会にも参加して多くの町工場関係者に話を聞き、加速度的にハマっていった。
一方、リーマンショックの影響で機械加工業界は仕事が9割減といった工場もあり、軒並み苦しんでいた時期でもあった。「仕事がない」と不安な表情で元気のない工場も少なくなかった。技術の高さを知れば知るほど、どこか悔しさがこみ上げた。「仕事がなければ僕が作るしかない」とおぼろげながら思案していたところ、運命の出会いを経験する。
(株)下請の底力というチームと出会ったのだ。下請けの底力は、リーマンショック後に町工場の新しいビジネスを模索しようと群馬県の町工場5社が集まってできた会社だった。
「そのメンバーの一人だった羽廣保志氏((有)ユニーク工業・代表取締役社長)から近所の農家さんが、穴を開けてほしいと農業機械の部品を持ってくることがあるという話を聞き、二人で『農機具カスタマイズ計画』という企画を立てました。町工場のネットワークで大手メーカーの手が回らない農家の特注ニーズに応えるという内容です。僕らは意気投合して、軽い気持ちでA‐1グランプリ2011に出場してみたところ、全国大会でまさかのグランプリを受賞してしまいました。優勝したいなどという下心は微塵もなく、とにかく会場を笑わせようと臨んだところ、バカウケ(笑)。本当に僕たちでいいんですか!? マジですか!? そこから人生が動き始めました」
【群馬県に移り住み、
現場主義を貫く】
A‐1グランプリ受賞後の懇親会で、農業界の名だたる方々から「農業界に必要な存在だ」と高い評価を受けた。しかし、称賛する言葉には決まって、「仕事にするのは難しいだろうけど……」と続く。思い立ったら即行動に移す性格は変わらず、ここでもその言葉で心に火がついた。軽自動車に布団とストーブとパソコンを詰め込んで、群馬県に移住し、羽廣さん宅の空き部屋を借りて共同生活を始めたのだ。
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