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昆 オランダの普及員制度がなくなったあたりですね。
紀平 だいたいそこで分かれています。補助金に対する捉え方も日本とは異なり、一時的なものという認識が強いです。これからもずっと受け取れるとは思っていないですし、もらえないなら次の手を考えるという感覚を持っている人が多いです。
国境を越えるのは普通なこと
昆 オランダはEU構想を最初に打ち出した国なんですね。農業に限らず、どうやってマーケットを作っていくのかという発想がもともとあります。視線の先には国内ではなくて、EUやそれ以外の外国があるんです。EUというマーケットがなかったら、オランダ農業もなかったでしょう。それからEU中のスーパーマーケットに品物を納めたわけですけど、いまはスペインが台頭してきています。
紀平 いま、オランダの施設園芸で満足に利益が出ているのはイチゴくらいです。それで施設園芸関連企業が外に外に行くわけですけど、スペインとかアフリカの国々に資材を売ったらいいので、安価なものが入ってきて苦しむという構図があります。だから、農家は苦しんでいます。
昆 でも、オランダの農家はたくましいですよね。僕が視察で訪ねたバラ農家や150ha規模の畑作農家はどれもファミリーファームでした。オランダのなかでは相当小さいそのバラ農家が海外農場を持っているというんですけど、これがなんの苦もなく国境を越えているんですね。育種会社だけではなくて、現実に農家もこうして出ていっているんです。
紀平 オランダ人は学生年代からどこかしら違う国に住んだことがあると聞きました。むしろ、他国に在住したことがない人は極めて少数だそうです。オランダでは「Tussenjaar」といってやりたいことを見つけるために教育プログラムの間や職を変える間などで1年間、 自由にできる期間があって、その年に国内でインターンシップをしてもいいですし、外国に行ってもいいんです。オランダ自体の教育が自分の意思で留年したり、何歳のときに何年という枠がないので、休学とかでどこかに行ってもかまいません。ですから、簡単に国境を越えてビジネスができるのかもしれません。
商機にオランダあり
昆 東日本大震災後にたくさんばらまいた補助金に目をつけられて、政府も農水省も完全にオランダに乗せられてモノを売りつけられています。農産物の輸出にとどまらず、こうしたモノやコンサルタントの派遣を含めてトータルで攻めてくるのがオランダです。ロシアや中国、南米、ケニア、マレーシアと挙げればまだまだありそうですけど、開発が不十分なところに進出してきますね。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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