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成田重行流地域開発の戦略学

かあちゃんたち主役のレストラン 三重県尾鷲市(中)


ここだけ・これだけ・
いまだけ

レストランのコンセプトは「ここだけ・これだけ・いまだけ」。つまり尾鷲でしか食べられない。それも限られた時間のなかで働く主婦の手作りであって、大量生産ではないから、決して多くはそろえられない。それでも旬の素材を活かした料理を味わってもらいたい、という気持ちが込められている。
これに関して本誌の読者は、15年12月号に「農村経営研究会」の定例会に関する記事で紹介した「いましかない、ここしかない、これしかない」という標語を思い出したかもしれない。これはレストランのコンセプトとまったく同じ意味である。先の講演をし、「夢古道おわせ」の開業にあたって全面協力した人物こそ成田さんなのだ。
「夢古道おわせ」の立地はいってみれば辺鄙だ。名古屋駅から電車で3時間前後かかる尾鷲駅から、さらに車で15分ほどかかる。それでもわざわざ食べに来てもらうには、それだけの魅力が不可欠だった。そこで登場するのが成田さんが地域開発の肝とする「ここだけ・これだけ・いまだけ」であり「唯一性」だ。バイキング形式で出される料理は尾鷲ならではのものばかりであり、何よりその味を生み出している主婦一人ひとりが唯一性を有している。つまり一人の人間のなかにもその土地特有の歴史や文化が詰まっているわけだ。成田さんからそのことを学んだ伊東さんは「ここはカリスマシェフがいるわけじゃない。それでも多くの人が来てくれるのは、まさにかあちゃんたちが価値なんです」と語る。

高齢化に合わせて
発掘再び

10年以上前に成田さんが初めて携わっていたころと比べてレストランが変わったのは、主婦たち全員がNPO法人KODOMO(代表:小西義人さん)に属していること。そのメンバーたちが三つのチームをつくり、毎週交代しながら料理を提供している。体制を変えた理由は「高齢化してきたため、個々のグループは組織を維持することが困難になってきたから」。
ただ、同じ組織であれば、グループ間での競争が生まれにくい。自然、マンネリ化の恐れもある。「夢古道おわせ」の現在について尋ねたとき、伊東さんが「好調といえば好調なんですけどね……」とひっかかるような語り口調だったのには、心中にこれからの継続についての不安や悩みがあったのかもしれない。
そのためか伊東さんは、新たな、というか以前に戻った試みに取りかかろうとしている。つまり成田さんの当初のやり方に倣って、集落ごとに主婦がチームを組み、料理を提供するスタイルを復活させようというわけだ。その狙いはもう一度自らの力で成長するグループをつくることにある。「地域づくりに手を付けていない集落をたきつけるべく、何者でもないおかあちゃんたちをくどいているところなんです。うちでタケノコのようにすくすくと育っていってほしい」。

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