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成田重行流地域開発の戦略学

かあちゃんたち主役のレストラン 三重県尾鷲市(中)


とはいえ、高齢化が加速していることに変わりはない。そのため通年で働けるだけの体力がある主婦も少なくなってきている。そこで伊東さんが思いついたのは一日だけ出店してもらうことだ。
すでに出店に賛同している集落は複数ある。そのうちのひとつは前号でも紹介した須賀利(すがり)。熊野灘に突き出た半島の海岸沿いにあるこの集落は、江戸時代には江戸と大阪を往来する廻船の風待ちの港として栄えた。「陸の孤島」といえるような辺鄙な場所にあるが、日用品を積んだ船も来航したため、生活に困ることはなかったそうだ。全人口に占める65歳以上の割合はなんと80%を超える高齢者ばかりの集落だ。

押し入れに眠る
20年物のテングサ

そんな須賀利の主婦たちが自ら「出店したい」と声をかけてきた。そこで伊東さんは、尾鷲市街地から車で40分かかるこの地を訪ねて、ここにしかないモノを掘り出してきた。そのひとつとして披露してくれた面白い話がある。伊東さんがある家にうかがったときのこと。主婦が出してくれたのはところてん。ただ、見た目の色が鮮やかだ。おまけに食べてみると、一味違う。聞けば、押し入れに眠らせていた20年物のテングサを煮溶かしてつくったそうだ。なぜこんな古いのが残っているかといえば、須賀利では大風が吹くと、岸辺にテングサやヒジキが打ち上げられる。地元の人たちはそれを取ってきて、天日乾燥させ、押し入れで保存しておくという。大風が吹くたびに取ってくるものだから、食べきれないほどの量になっているわけだ。日本中探したところで、これだけ年代物のテングサやヒジキがある場所はなかなかないだろう。しかもストーリーが面白いではないか。
そう感じた伊東さんは、須賀利の主婦がレストランに出店する際には、これらの海藻を使った料理をレシピのひとつにしてもらうつもりだ。もちろん主婦には店頭に立ってもらい、自らの言葉でそのストーリーを説明してもらう。来客が面白がって喜ぶ姿がなんだか想像できる。

地元で活躍する
卒業生たち

伊東さんが集落の主婦たちの活躍する場としてレストランを提供するのは、いずれ卒業して、それぞれの地域で活動を展開してもらうためでもある。一度、接客の仕方を学んだ主婦のグループには、別のレストランを開くなどして、地域を盛り上げてもらいたいと願っている。集落ごとにそうした活動が点々と誕生していけば、前号で紹介したウォーキングコースと同じく、相乗効果をなして尾鷲全体の集客力を高めていくに違いない。もちろん、それに影響されてほかの主婦も地域開発に向けて立ち上がることは十分にありうる。

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