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成田重行流地域開発の戦略学

かあちゃんたち主役のレストラン 三重県尾鷲市(中)


すでに初代のグループは新たな旅路に出ている。たとえば「夢古道」の対岸にある天満浦の男女20人でつくるNPO法人天満浦百人会。我々が尾鷲を訪れた初日の夕方、かつて紡績会社社長の別荘だったという「天満荘」を訪ねた。天満荘は築年数100年の木造建築。地域の子供たちから「お城」と呼ばれていただけに趣にあふれている。09年に取り壊しになるところだったのを、百人会が自費で買い取り、この歴史ある建物を保存している。
玄関先で会長の松井まつみさんたちが迎えてくれた。この日は私たちのために料理をこしらえてくれた。テーブルに並べられたのは新鮮なカツオの刺身や白和えなど土地の料理ばかり。見た目にしても味にしてもどんな料理屋に出しても恥ずかしくないレベルだ。もちろん彼女たちも、伊東さんいわく「もともとは普通の主婦」だったわけだから、改めてその変貌に驚いてしまう。
松井さんたちが「お母ちゃんのランチバイキング」を卒業したのは14年3月。その4年前からこの天満荘でカフェも営業していた。いまも毎週金曜日から翌週月曜日の10時から16時まで店を切り盛りしている。加えて16年6月からは毎月第3日曜日だけ「月いち天満レストラン」も開業している。店名のとおり月1回だけ地元の食材を使った料理を振る舞うというものだ。「お母ちゃんのランチバイキング」から身を引いたものの、ファンから活動の再開を望む声が日増しに高まっていったことが後押しになった。理由はもうひとつ、天満荘の修繕費を集めるため。築100年と老朽化している天満荘は地域の防災や交流の拠点として期待している。松井さんは「天満荘はいつでも誰でもがふらっと立ち寄れる場所として残したい」と語る。
すっかりごちそうになって、暗くなった外に出てみた。すると、静かな入り江にたたずむ漁船の光と夜空の星が目に入ってきて、しばらく立ち止まってしまった。さっきの料理にこの眺望もあるなら、さらに大勢のファンを獲得するに違いないと思った。

「夢古道おわせ」に
続く「おとと」

改めていうまでもなく、地域には宝が眠っている。とりわけ地域の最大の宝は人といえるだろう。「夢古道おわせ」はまさにその証左となる存在である。伊東さんいわく「もともとは普通の主婦」を主役にした功績は大きい。NPO法人天満浦百人会はまさにファンがついていて、そうしたファンからの後押しを受けて卒業後も「天満荘」で活動を再開しようとしている。普通の主婦がどうしたら活躍できるかを知りたいと、全国から視察の問い合わせが相次いでいる。とりわけ東日本大震災から復興しようとする東北地方の人たちがよく訪ねてくるそうだ。

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