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【土と施肥の基礎知識】
土の化学性(2)CEC(土の胃袋)
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第9回 2016年09月16日
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人に胃袋があるように、土にも養分を蓄えるしくみがある。人の胃袋はまさに袋で、その中に食べたものがたまるが、土の場合は少し違う。土の胃袋は陽イオン交換容量(CEC)と呼ばれ、図1のようにその表面がマイナスに帯電しているため、そこに石灰・苦土・カリ・アルミニウムなどの陽イオンが電気的に吸着される。その概念を人の胃袋に例えただけで、実際に袋状のものは存在しない。
土の胃袋の表面に吸着される陽イオンを交換性陽イオンという。そのうち、石灰・苦土・カリを交換性塩基と呼び、土の中では塩基性(アルカリ性)を示す。一方、交換性アルミニウムは酸性を示す陽イオンで、これと交換性塩基と割合により土のpHが左右される。
石灰・苦土・カリは植物の必須要素でもあるが、多くなりすぎると土が塩基性に傾き、微量要素欠乏により作物の生育が阻害される。逆に、交換性アルミニウムが増えると、土が酸性に傾くとともに、根の生育を著しく阻害する。
CECに占める交換性塩基の割合(塩基飽和度)が80%程度、交換性アルミニウムが20%程度の状態が「腹八分目」で、多くの作物が最もよく生育する。そのような状態の土のpHを測定すると6.0~6.5を示すことから、我が国の土壌学ではその範囲の土を中性と見なすことにしている。人と同じように、土も「腹八分目」が健康によい。なお、土の胃袋を科学的に表現した用語が「土のコロイド」である。
2.土の胃袋には
土の中でCECの機能を持つ成分は粘土と腐植である。したがって、CECの大きさは土性(砂と粘土の混ざり具合)と腐植含有量、それに粘土の中に含まれる粘土鉱物の種類により決まる。
海岸近くの砂丘地ではCECが5程度以下と小さく、腐植を多量に含む黒ボク土では40以上にも達する。通常、土のCECは15程度以上が最適値とされるが、大きいだけが能ではない。
石灰・苦土・カリは植物の必須要素でもあるが、多くなりすぎると土が塩基性に傾き、微量要素欠乏により作物の生育が阻害される。逆に、交換性アルミニウムが増えると、土が酸性に傾くとともに、根の生育を著しく阻害する。
CECに占める交換性塩基の割合(塩基飽和度)が80%程度、交換性アルミニウムが20%程度の状態が「腹八分目」で、多くの作物が最もよく生育する。そのような状態の土のpHを測定すると6.0~6.5を示すことから、我が国の土壌学ではその範囲の土を中性と見なすことにしている。人と同じように、土も「腹八分目」が健康によい。なお、土の胃袋を科学的に表現した用語が「土のコロイド」である。
2.土の胃袋には
大小と強弱がある
土の中でCECの機能を持つ成分は粘土と腐植である。したがって、CECの大きさは土性(砂と粘土の混ざり具合)と腐植含有量、それに粘土の中に含まれる粘土鉱物の種類により決まる。
海岸近くの砂丘地ではCECが5程度以下と小さく、腐植を多量に含む黒ボク土では40以上にも達する。通常、土のCECは15程度以上が最適値とされるが、大きいだけが能ではない。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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