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土と施肥の基礎知識

土の化学性(2)CEC(土の胃袋)


CECには大小のほかに強弱があり、腐植自体は大きなCECを持つが、塩基類の吸着力は粘土より弱い。粘土は腐植より吸着力は強いが、そのなかでもモンモリロナイトのような2:1型粘土鉱物はCECが100内外と大きく、塩基類の吸着力も強い。モンモリロナイトは世界で最も肥沃なチェルノーゼムに多く含まれる粘土鉱物で、優良粘土と呼ばれるが、残念ながら日本の土の中にはほとんど含まれていない。日本の土に多く含まれるハロイサイトのような1:1型粘土鉱物のCECは、モンモリロナイトの10分の1程度に過ぎず、吸着力も弱い。
CECの強弱の違いは粘土鉱物の構造に関係する。土の表面にマイナスに帯電する電荷を陰電荷と呼ぶが、これが強力なほど吸着力が大きくなるからだ。
たとえば、図2の2:1型粘土鉱物のように2枚のケイ酸四面体に挟まれたアルミナ八面体層中には強力な陰電荷が発生するが、1:1型粘土鉱物のアルミナ八面体層中には発生しない。どちらの粘土鉱物もトタン板を2枚あるいは3枚重ねたような層状構造であるため、必ず端ができる。そのケイ酸四面体層の端には弱い陰電荷が発生する。また、黒ボク土に含まれるアロフェンは球状構造であるため端はないが、その表面に弱い陰電荷が発生する。
CECが強ければ、交換性塩基を強く引きつけるので、雨やかん水などでも流れにくい。逆にCECが弱いと土の胃袋から交換性塩基が外れやすく、作物に利用されずに地下に流れてしまう。交換性塩基が外れたところには、交換性アルミニウムが入り込むため、土が酸性に傾くことになる。
土の胃袋の大きさは、土壌分析によりCECとして測定できるが、強弱は通常の分析では測れない。ただ、日本の土の胃袋の強弱は「中」ないし「小」と見なせばよい。

3.日本の土は、酸性になるほど
CECが小さくなる

土のpHが酸性に傾くと、作物の根がアルミニウムイオンによる生育障害を受けるため、石灰資材を施用して酸性を改良することが土づくりの基本とされている。しかし、酸性の土を改良する理由はもう一つある。
じつは、土のCECはpHにより変化し、pHが低下するほど小さくなるのだ。そのメカニズムは少し複雑だが、土のCECを電磁石に例えるとわかりやすい。電磁石のコイルに流す電流を大きくするほど磁力が高まるように、pHが高まれば粘土鉱物や腐植内の陰電荷が増えてCECが大きくなり、pHが下がれば陰電荷が減ってCECが小さくなる。土壌学では、このような陰電荷のことをpH依存性陰電荷という。

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