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ちなみに、モンモリロナイトのアルミナ八面体中の陰電荷は、pHによる影響を受けないので、永久陰電荷と呼ばれる。これは通電量によって磁力が変化する電磁石に対して、永久磁石に相当する。pHによりCECが変化する電磁石のような性質は、1:1型粘土鉱物やアロフェンを多く含む日本の土ほど大きいので酸性改良が重要となる。
土壌診断で示されるCECはpH7の場合の数値である。たとえば、CECが改善目標値の15であってもpHが5.5であれば、その土の真のCECは15より小さい。なお、CECには単位(meq/100g)があるが、生産現場では省略することが多い。
4.黒ボク土が持つ
もう一つの胃袋
土の胃袋にはCECのほかにAEC(陰イオン交換容量)という機能も備わっている。CECは胃袋の陰電荷に陽イオンが吸着されるのに対して、AECでは胃袋の表面がプラスに帯電し、陽電荷が発生する。その陽電荷に硝酸イオン(硝酸態窒素)・塩素イオン・硫酸イオンなどの陰イオンが吸着される。
2:1型と1:1型粘土鉱物では、陽電荷はアルミナ八面体層の端にわずかしか存在しない。一方、図3のようにアロフェンでは球状構造の表面に、腐植では分子の表面に陰電荷と混在している。そのため、アロフェンを含む黒ボク土ではCECで陽イオンを、AECで硝酸イオンなどの陰イオンをともに蓄えることができる。
黒ボク土は化学性が悪い土とのイメージが強いが、この点は非黒ボク土に優る。なお、AECに大小はあるが強弱はない。ちなみに、AECが最も大きな土はアロフェンを多く含む鹿沼土だ。鹿沼土は単に保水性に優れるだけの園芸用土ではない。その辺りの話はまたの機会に。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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