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イベントレポート

調理用トマト普及の鍵を握る「ソバージュ栽培」/新世代アグリカルチャー育成講座


トマトの市場拡大と
新たな調理文化創造

続いて「ソバージュ・イニシアティブ」と題したゲストトークセッション(コーディネーター=野菜ジャーナリスト・篠原久仁子氏)。パネリストの発言を要約しておこう。
★ソバージュ栽培誕生秘話 秋田県横手市実験農場・加藤正一氏
ソバージュ栽培の発祥の地とも言える秋田県横手市は、もともと水田単作地帯でトマトは施設栽培が常識、露地栽培にはまったくなじみはなかった。当初は自ら生産した苗を地元農協組合員に配布するなど、下地作りや地道な努力の積み重ねが、後に産地作りという形で実を結びつつある。行政機関である実験農場が産官学連携のキーセクターとなり、地元農協との協力のなかで一定の規模感のある産地作りに貢献した事例と言える。
★地元から伝える国産トマトソースのおいしさ (有)甚右衛門・高信祐介氏(福島県矢祭町)
調理・加工用トマトのおいしさを、消費者に実体験として伝えていくことを重視。自社農場にピザ窯を自作し、来園者の収穫体験後にできたてのピザを振る舞い、国産トマトソース(品種:サンマルツァーノリゼルバ)の商品力を日々確かめながら、将来に手応えを感じている。個人消費者からの生のフィードバックは、広く流通する加工製品の開発などに活かされることが期待される。
★地の利を活かした青果販売とイベント企画 加藤農園・加藤博久氏(東京都練馬区)
都市農業では、消費地に近い立地を活かしたソバージュ栽培が展開されている。青果販売では農場での直売出荷という強みを活かした完熟出荷を実践、出荷最盛期には、収穫体験イベントの開催を通じて収穫・出荷の手間を軽減している。徹底したマーケットインの発想で、一般消費者が仕事後に来場しやすいようにあえて夜間に開催するナイトマルシェを一生産者として企画。収穫体験だけで終わらず料理教室・レシピコンテストの開催を通じて地元レストランのシェフと連携を継続している。
★ソバージュ栽培挑戦者同士の交流 鎌塚農園・鎌塚忠義氏(兵庫県篠山市)
高温多湿、病害発生条件の厳しい西日本エリアからは、生産環境に合った栽培管理の事例紹介、端境期の出荷の取り組み、収益力の向上につながる青果パッケージの改善などの実践的ノウハウが紹介された。東北から始まったソバージュ栽培が西日本エリアでも急速に広まる背景には、インターネットとりわけSNSで形成される、生産者コミュニティ内での活発な交流がある。facebook上の「ソバージュ栽培を考える会」というグループでは、成功事例だけではなく、失敗談やリスク面も随時共有され、対策も含めた情報交換が活発に行なわれている。栽培技術やマーケティングがネットを通じて共有されるなかでソバージュ栽培経験のない生産者が、新たに挑戦しやすい環境が整いつつある。

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