ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

ポスト「減反廃止」戦略 水田経営のこれから


【米価維持の転作交付金】

とにもかくにも減反廃止の中身がどうなるかについては、いろいろと噂されている。だが、現段階において明確になっているのは、「生産数量目標」と「コメの直接支払交付金」がなくなることの二つに過ぎない。では、これらがなくなることで、減反政策は完全に廃止されるのかといえば、「否」である。なぜなら減反政策を成り立たせているもうひとつの重要な条件が継続することになっているからだ。それは水田で転作した場合に出される「直接支払交付金」である。
この制度の現状について触れておこう(図1)。10a当たりの支払額は品目によって異なる。麦と大豆、飼料作物については3万5000円、ホールクロップサイレージ(WCS)用稲には8万円。加工用米には2万円、飼料用米と米粉用米には収量に応じて5万5000円から10万5000円。最後の飼料用米と米粉用米が「収量に応じて」というのは、市町村などが当該地域について明らかにしている平均単収が基準となる。その単収より実際の収量を多くすれば、1kgごとに約167円が増額されていき、最大で10万5000円にまで達する。
ただし、飼料用米に関してはこれで終わりではない。加算措置がある。そのひとつは耕畜連携をした場合に支給される1万3000円。耕畜連携というのは耕種農家が畜産農家から糞尿をもらい受けたり、それを堆肥化して田にまいたりすることを指す。それから多収品種を導入した場合への1万2000円。合わせれば2万5000円になる。もし収量を最大にして、これら二つの交付金もゲットすれば、じつに13万円にもなる計算だ。
転作に関する一連の交付金の18年以降の扱いについて、農林水産省穀物課は「継続する」と答えている。ただし、交付単価については「未定」とのこと。

【交付金の多寡で誘導】

では、なぜ転作に関する交付金が減反と深くかかわってくるのか。簡単にいえば、現制度においては飼料用米に誘導するように仕組まれているからだ。
その理由は、主食用米と比べた場合に交付金の多寡がまるで違うことにある。繰り返しになるが、10a当たりの交付金は主食用米が7500円。これに対して飼料用米は最大で10万5000円にもなる。この差額の大きさから、コメの生産が主食用米から飼料用米に引っ張られているのが現状だ。
このことは図2(前ページ)を見ればわかる。農業者戸別所得補償制度のモデル対策が始まった10年産では飼料用米の作付面積は1・5万haに過ぎない。それから増加傾向に向かい、とくに15年産では一気に増えて8万haにまで達した。16年産では34県でさらに増えると予想されている。これと連動して主食用米の作付面積は減っている。

関連記事

powered by weblio