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【これからの農業・農村の道しるべ】
[前編]非市場経済をどう成立させるか
- 編集部
- 第1回 2016年10月12日
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――今日は、松尾さんの著書『スマート・テロワール』と『ジャガイモから見える農業の未来』をもとに、マーケティングがご専門の小川先生から質問をいただきながら、農業と農村、ひいては食と農を中心とした地域社会のあり方の理想像をどうやって具現化していくのかについて議論していただきたいと思います。
小川孔輔(法政大学大学院教授) 松尾さんの著書を読ませていただきましたが、スマート・テロワールという自給経済圏をつくるためには、農産物の取引を市場原理に任せないという「非市場経済の実現」と、企画・生産から小売までを一貫して垂直統合する「食のSPA化」の二つがポイントになると思っています。つまり、ある地域のなかで、共通の価値観や意識でつながっている人たちによって運営されている組織が、農業生産と食品加工に関する決定を下す。そうすることで天候や為替などによって変動する市場相場から自由になるわけです。これは私が常々主張してきたことと通じています。まず、どうしたら非市場経済を実現できるのかについてうかがいたいと思います。
松尾雅彦(カルビー(株)相談役) 具体例は本には一切書いていませんよ。実物を見ないことにはわからないですから。ただし、実際の取り組みをきちんと経済的に読み解く人がいないのが残念なことです。
――日本では主に市場経済のなかで財やサービスの取引が行なわれていると思いますが、そもそも市場経済では何が問題なのでしょうか。
松尾 市場経済の根本問題は格差社会に収斂(しゅうれん)することです。自由競争で神の手が働き調整されるということは幻想でした。強者が固定化し、それらによって決められる価格に支配されるのです。農業の場合はそうとは言い切れません。たとえばコメをつくっても、市場に流通するのは6割ぐらいで、縁故米など残りの2割は市場に出回らないでしょう。
小川 確かにそうですね。市場経済が9割以上だと認識していましたけど、実際には市場経済が占めるのは6割でもおかしくないですね。
松尾 それなのに市場経済で片付けようとしていることが問題なんですよ。農業というのは、基本的に健康的で安心できる食生活をお客さんに提供しなければならないものなのに、市場経済においては誰が食べるかわからないものをつくっています。その結果、お客さんのためではなく、私益のためになってしまいます。もし、地域の仲間が食べるものをつくるなら、農薬や化学肥料の使い方も変わってくるでしょう。
小川孔輔(法政大学大学院教授) 松尾さんの著書を読ませていただきましたが、スマート・テロワールという自給経済圏をつくるためには、農産物の取引を市場原理に任せないという「非市場経済の実現」と、企画・生産から小売までを一貫して垂直統合する「食のSPA化」の二つがポイントになると思っています。つまり、ある地域のなかで、共通の価値観や意識でつながっている人たちによって運営されている組織が、農業生産と食品加工に関する決定を下す。そうすることで天候や為替などによって変動する市場相場から自由になるわけです。これは私が常々主張してきたことと通じています。まず、どうしたら非市場経済を実現できるのかについてうかがいたいと思います。
松尾雅彦(カルビー(株)相談役) 具体例は本には一切書いていませんよ。実物を見ないことにはわからないですから。ただし、実際の取り組みをきちんと経済的に読み解く人がいないのが残念なことです。
非市場経済の三つの考え方
――日本では主に市場経済のなかで財やサービスの取引が行なわれていると思いますが、そもそも市場経済では何が問題なのでしょうか。
松尾 市場経済の根本問題は格差社会に収斂(しゅうれん)することです。自由競争で神の手が働き調整されるということは幻想でした。強者が固定化し、それらによって決められる価格に支配されるのです。農業の場合はそうとは言い切れません。たとえばコメをつくっても、市場に流通するのは6割ぐらいで、縁故米など残りの2割は市場に出回らないでしょう。
小川 確かにそうですね。市場経済が9割以上だと認識していましたけど、実際には市場経済が占めるのは6割でもおかしくないですね。
松尾 それなのに市場経済で片付けようとしていることが問題なんですよ。農業というのは、基本的に健康的で安心できる食生活をお客さんに提供しなければならないものなのに、市場経済においては誰が食べるかわからないものをつくっています。その結果、お客さんのためではなく、私益のためになってしまいます。もし、地域の仲間が食べるものをつくるなら、農薬や化学肥料の使い方も変わってくるでしょう。
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