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これからの農業・農村の道しるべ

[前編]非市場経済をどう成立させるか


松尾 米国をはじめとする世界に対抗するには、日本も団体戦をやらなければいけません。そのために非市場経済が必要なのです。

カルビーが実現した
契約栽培と非市場経済

小川 少し具体的な話を聞きたいのですが、団体戦をやるための準備といいますか、手法にはどんなものがありますか。カルビーのポテトチップ用ジャガイモの契約栽培は互酬の一例とおっしゃっていましたね。
――カルビーはポテトチップの原料調達部門を1980年に子会社化して、ジャガイモ産業の核をつくりました。
松尾 そのとき以来農家との取引基本価格は35年間一定です。品質向上のための生産者の技術指導体制を欧米のシステムから学び、マーケティングと流通を変えたのです。
小川 実際に生産と加工、販売の連携はどうなっているのですか。
松尾 まずジャガイモの生産者との契約については、カルビーが責任を負って契約した量を全量買い取ります。規格ごとに一定の価格で、しかも良質なものを高く買い取ります。互酬の考え方を取り入れて品質に応じてインセンティブをつけています。
小川 それを産地ごとに束ねたのですね。
松尾 そうです。産地ごとに倉庫をつくって、収穫時期も農家の判断に任せないで、品質チェックをして掘り取るという体系をつくりました。
小川 小売業とはどのような連携をしたのですか。
松尾 スーパーマーケットも地域ごとに集まってもらって、ポテトチップの鮮度管理について理解してもらいました。これは米国から入ってくるポテトチップより優位に立つための団体戦です。じつは発売当初はポテトチップが売れなかったんです。発売の8年前にニューヨークへかっぱえびせんを売り込みに行ったときに「スナックは鮮度が良くないと売れない」といわれたのです。それで鮮度にこだわった生販体制をつくりました。「100円でカルビーポテトチップスは買えますが、ポテトチップスで100円は買えません」というコマーシャルも効果がありました。
小川 鮮度がいいものを店頭に置くために商品を回転させたのですね。
松尾 消費者は信頼の置けるものを享受できますし、メーカーは利益を確保できます。その回転を維持することで農家と契約栽培ができるわけです。種イモを確保するためには、2年先の商品販売量を保障していないと回りません。
小川 販売の保障は2年先で、さらに植え付けや品種の研究開発はさらにさかのぼるわけですね。
松尾 収穫したものを売らなければいけないという債務を負うことになるので市場経済ではできません。売れ続けるマーケットをつくるのもメーカーの責任です。小売業との互酬関係を形成するときには、流通システムの改善に精力的に取り組みました。

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