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【土と施肥の基礎知識】
土の化学性(3)土の酸性
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第10回 2016年10月12日
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日本の年間平均降水量は約1700mmと世界平均の約2倍で、その雨が土を酸性にする。ただし、酸性雨がその原因というわけではない。大気中には約0・04%の二酸化炭素が含まれていて、その一部が雨に溶けるため、まったく大気汚染のない地域でも雨のpHはおよそ5・5で、ごく希薄な水素イオンを含む炭酸水と考えてよい。
前回述べたように、土の胃袋(コロイド)には石灰・苦土・カリが交換性塩基(陽イオン)として吸着されている。雨水中の水素イオンが土の中にしみ込んでくると、どちらも陽イオンであるため、交換性塩基と水素イオンの間で場所取りのケンカが始まる。水素イオンは図体が小さく、すばしっこいためケンカにめっぽう強い。そのため、交換性塩基がコロイドから外れて、そこに水素イオンが入り込んでしまう。このような土のコロイドでの陽イオンのケンカを陽イオン交換反応という。
水素イオンに追い出された塩基は、土の中で交換性塩基から水溶性塩基に変わり、一部は作物に吸収されるが、それ以外は下層に移動して、やがては地下水に流れ込む。
一方、水素イオンが土のコロイドに吸着されると、土が酸としての性質を帯びるため、その酸で粘土鉱物中の屋台骨に相当するアルミナ八面体層の一部が崩れてアルミニウムが溶出する。それが土のコロイドに吸着され、交換性アルミニウムイオンとなる。
土の中で、このような陽イオン交換反応とアルミニウムイオンの溶出が繰り返されると、交換性塩基が減り、逆に酸性を示す交換性アルミニウムが増えるため、塩基飽和度が徐々に低下して、土が酸性化する。これが図1に示した酸性化のメカニズムである。
水素イオンに追い出された塩基は、土の中で交換性塩基から水溶性塩基に変わり、一部は作物に吸収されるが、それ以外は下層に移動して、やがては地下水に流れ込む。
一方、水素イオンが土のコロイドに吸着されると、土が酸としての性質を帯びるため、その酸で粘土鉱物中の屋台骨に相当するアルミナ八面体層の一部が崩れてアルミニウムが溶出する。それが土のコロイドに吸着され、交換性アルミニウムイオンとなる。
土の中で、このような陽イオン交換反応とアルミニウムイオンの溶出が繰り返されると、交換性塩基が減り、逆に酸性を示す交換性アルミニウムが増えるため、塩基飽和度が徐々に低下して、土が酸性化する。これが図1に示した酸性化のメカニズムである。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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