記事閲覧
4.窒素の過剰施用は
悪循環の始まり
畑で窒素施用を繰り返せば、このようなメカニズムで交換性塩基が一方的に減るので、土のコロイドには土の中に多量存在する水分子から外れた水素イオンが吸着される。その後は未耕地と同じメカニズムにより、土のコロイドからアルミニウムイオンが溶出し、土が酸性化して雨水のpHが低下する。
そこで、野菜や畑作物栽培では苦土石灰などの石灰資材を施用して、硝酸イオンと駆け落ちした石灰や苦土を補ってpHを6・0~6・5に戻す。これが畑の酸性改良の基本である。一方、茶樹はpH4~5の酸性を好む作物であるため石灰施用量が少なく、また茶葉の品質を高めるため窒素肥料を多く施すので、極端な酸性土壌となる。
また、地下に駆け落ちした硝酸イオンが地下水に流れ込むと、それが水域の富栄養化の一因となる。
このように、無駄に窒素肥料を多用すれば石灰資材も増え、肥料代の浪費ばかりでなく、環境負荷を増す。さらに、窒素肥料のほかにも生理的酸性肥料に分類される塩化カリウム(塩加)や硫酸カリウム(硫加)などの過剰施用も土の酸性化を助長するので、土壌診断分析に基づいた施肥管理を徹底すべきである。
会員の方はここからログイン
後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)