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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第二十二章 投資の心構え(3)中古・新品トラクターの減価償却


二つ目の事例は同じく中古トラクターだが、7年経過したものを300万円で購入した場合だ。このように法定耐用年数を経過している場合は、減価償却期間が2年と定められている。定額法による毎年の償却額は、期首帳簿価格を2年で分割した150万円となる。
最後の三つ目は、800万円の新品のトラクターを想定してみた。減価償却期間は、法定耐用年数の7年だ。毎年の償却額は114万3000円と三つの事例のなかでは最も小さくなる。
当然のことだが、耐用年数がやや経過した中古農機のほうが、新品と比べても価格が安く、買い求めやすい。さらに重要なのは、耐用年数が圧縮されることで大きい額の減価償却費を費用として計上できる点である。私がこれを得だと考えているのは、投資から回収までを短く済ませられるからだ。つまり、減価償却費は悪しき粉飾決算の費用ではなく、上手に眺めることで節税にも役立つ税制度でもある。なお、ここでは定額法を用いたが、定率法であれば初年度の償却額がより大きくなることも覚えておきたい。

妥当な投資と
確実な返済計画を

資産は購入時点で支払いが完了しているので、減価償却費は請求書のない架空の費用計上であるから重視していないという話も耳にする。しかし、投資を進めて規模・事業拡大を目指す経営ではなおのこと、生産原価を据えることが経営目標達成の命綱となる。新たな投資をする際には、自己の減価償却費を資産台帳から見据えて、機械費用や資金繰りを考えてみる必要があるのではないだろうか。
たとえば、減価償却の仕組みをよく知っている人のなかには、節税のための機械購入が習慣化しているという話を聞く。自己資金で購入した場合は早く回収できるため、資金繰りに有利に働くことはある。だが、購入資金を全額負債で調達した場合には、償還のペースが早ければいいのだが、資金収支は思いのほか改善せず、キャッシュをじわじわと目減りさせる。とくに償還年数が耐用年数を超えると資金繰りがきつくなる。これでは節税はできても、経営発展にはつながりそうもない。
投資に際して負債で資金調達をした場合は、耐用年数を超えない償還計画とし、減価償却費に見合う支払いをしていくことが、損益計算からみた妥当な投資と回収が可能な資金返済計画となる。減価償却が終わっても、負債の返済が残るようあれば、資金難につながりかねない。損益計算における減価償却の仕組みを知ることと、返済による資金収支のバランスを整えることは、資金貧乏にならないための砦なのである。

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