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土門「辛」聞

太平物産肥料偽装事件 時代遅れの肥料取締法

秋田市が本社の太平物産は、有機質を原料にした肥料を得意とする肥料メーカーだった。実際、全銘柄の7割は、「有機入り複合肥料」で占めていた。資本関係はないものの、原料の大半を全農から仕入れ、製造した製品は全農だけに出荷していた。その取引実態から全農にとって「実質的な肥料製造部門」のような存在と言えよう。
太平物産と全農の関係は、全農が2015年12月11日に公表した「太平物産株式会社の肥料製造における不正行為について」と題した調査報告書にも詳しい説明がある。
「太平物産とJA全農との取引は、太平物産が創業した昭和23年に開始されて以来、本件不正行為の発覚によって同社工場での肥料製造販売を停止した平成27年10月まで継続されてきた。取引は、主として、肥料原料の売買と製造された肥料の売買である。太平物産が肥料原料の一部をJA全農から購入し(その他は商社等商流系で調達)、JA全農が同社製造肥料のほぼ全量を購入し、『全農マーク』を付して、JAをとおして生産者に販売していた」
この説明では、全農から調達する肥料原料は「一部」と記述しているが、「大半」という表現が正解かもしれない。化成原料は全農から、全農が扱わない有機原料についてのみ、商社等商流系からの調達となるからだ。
太平物産は、もともと三菱マテリアル(株)などが設立したもので、歴代、同社の経理部門出身者を社長に送り込んできた。08年に太平物産株をすべて売却する。ところが、引き受けたのは全農ではなく、太平物産の役員持株会や社員持株会だった。このほか三菱商事(株)、日本マタイ(株)、ジェイカムアグリ(株)など5社が株主に名前を連ねていた。
太平物産の年間売上高は約70億円、従業員数は約132名。肥料メーカーとしては中堅より上のクラスになる。偽装肥料事件が表面化してすぐの15年11月27日、秋田地裁に民事再生法の適用を申請。16年7月8日、工場などを売却して債権者へ返済することを柱にした再生計画案を同地裁に提出している。

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