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そうした都市化の波こそが、まさしく新宿から「内藤とうがらし」を絶滅させる要因となった。つまり、新宿が宿場町として繁栄するにしたがって、甲州街道や青梅街道の並びには問屋や流通業などが出現して宅地化が進み、次第に農地は消えていった。拍車をかけるように、八房系よりも辛みがずっと強い鷹の爪系が登場した。その刺激にひかれた農家は八房系に代わって鷹の爪系を作るようになったのだ。いつしか八房系は忘れられた存在となった。
現代に復活させるプロジェクト
ここに書いている八房系を現代によみがえらせる取り組みこそ、成田さんが仕掛けている「内藤とうがらしプロジェクト」である。このプロジェクトの一環で、成田さんが携わるNPO法人おいしい水大使館は10月1日から、今年も新宿を代表する名店で冒頭のフェアを順次展開していった。フェアの参画企業として名を連ねるのは、「新宿高野」「新宿 中村屋」「天ぷら つな八」「玄海」「追分団子」「紀伊國屋書店新宿本店」「新宿高島屋」「TOKYU HANDS」などとそうそうたる顔ぶれだ。
たとえば、中村屋は地下1階の「スイーツ&デリカ Bonna(ボンナ)」で内藤とうらがしを使った総菜を、紀伊國屋は1階入り口の特設売り場で内藤とうがらしの鉢植えや成田さんが「げんどう」の名前で文を担当したトウガラシの絵本「すずめととうがらし」を取りそろえた。
なかでも最も盛況という印象を受けたのは伊勢丹新宿本店。地下1階にある食品売り場のメイン会場「Food Collection」では6日から11日まで内藤とうがらしを使った全国の加工品を一堂に並べた。昨年に引き続き福岡県豊前市の特産である「たまねぎドレッシング」や「ゆず胡椒」から、宮城県気仙沼市の「笹かまぼこ内藤とうがらし入り」や服部栄養専門学校の「とうがらし×きんかんのミックスジャム」といった新作も数多く見られた。
そこには岐阜県飛騨市の「飛騨牛肉味噌内藤とうがらし」や三重県尾鷲市の「まぐろ角煮内藤とうがらし入り」といった新顔もあった。これらについては、それぞれ本連載の「飛騨編」と「尾鷲編」で触れているので、読者は覚えているかもしれない。双方の場所で取材している合い間、成田さんは地元の食品会社に内藤とうがらしを使った加工品づくりを提案していた。いずれも4月と7月のことである。それがすでに実現し、早くも伊勢丹に登場していることに驚いた。
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