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成田重行流地域開発の戦略学

続・内藤とうがらし復活物語 東京都新宿区


もちろん伊勢丹で扱ってもらうようになるのは簡単ではない。NPO法人おいしい水大使館の代表である阿部千由紀さんは「置きたかったけど、伊勢丹の厳しい基準を超えられず、駄目だった商品はたくさんある」。伊勢丹でのフェア初日となった10月6日。特別許可で開店前に入店させてもらい、会場で撮影していると、伊勢丹の社員が入れ代わり立ち代わり最後の検品に来ていた。いわば世界最高峰ともいえる品質基準を超えるだけの商品づくりや管理技術を持つ企業といかに組むかが大事なのだ。

クローンタウンのままでは味気ない

それにしてもNPO法人に対し、伊勢丹が1週間近くもテナントを貸し出すとは面白い。それも食品売り場のメインスポットを、である。株式会社三越伊勢丹常務執行役員にして伊勢丹新宿本店長の鷹野正明氏は次のように語る。
「内藤とうがらしのお話をうかがって、何よりもびっくりしたのは、かつて新宿がトウガラシで赤いじゅうたんを敷いたように見えたということ。これは絶やしてはいけないんだろうなと感じた。我々はいま『ディス・イズ・ジャパン』を合言葉に日本各地のいろいろなものにフォーカスしていて、それらを歴史のなかでとらえることが大事だと思っているところです。内藤とうがらしについてはようやくこの規模まで認知されてきたので、もっともっと店ぐるみというか町ぐるみで仕掛けをしていきたい。経済効果ですか? もちろんあります。ただ、この取り組みは数字につなげるかどうかというのではない。企業としてのポリシーや方向性をお客様に伝えるということにおいて大事だと考えている」
鷹野氏の話で思い出したのは、ロンドン在住の英国人女性が自分たちの都市を「クローンタウン」と呼んでいたことだ。ロンドンではどこもかしこの街もチェーン店を置いて似たり寄ったりで、面白みに欠けるからだという。だから彼女は京都で日本茶の栽培から作法までを学んでおり、その経験を基にいずれはロンドンで日本茶の専門店を開きたいということだった。
これまでの新宿もまさに「クローンタウン」といって誤りではなかったと思う。いまや駅を降りれば、どこにでもある新興の店で埋め尽くされている。そうした店は文化的に、あるいは歴史的に新宿にある必然はない。そんなのっぺりとした表情の新宿を変えるために期待されているのが内藤とうがらしである。新宿区長の吉住健一氏はその登場に喜んでいる。

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