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編集長インタビュー

高関税による保護は国益に合わない国際競争力ある農業を育てる政策へ



昆 農村をどう位置付けるかも大切ですが、むしろ日本の産業全体をどう活性化するかではないでしょうか。他産業の成長抜きに農業の成長はありません。農政では「衰退する農村」が語られ、農家は後継者不足を嘆きますが、農業にかかわりたいという都市の若者は大勢います。しかも、豊かになった社会の中において、農業は文化も含めた満足を需要者に与えられる可能性をもっています。

大塚 異論ありません。私は医療問題にも取り組んでいるのですが、医療の世界にも農業と似たような状況があります。「生産者」に相当する病院の多くは経営が厳しく、「消費者」に当たる患者の方は負担増の割に満足していません。「国民医療を守る」ことばかりが叫ばれますが、従来の制度や仕組みの構造問題がなかなか改善されません。
 医療関係の製品を開発している企業は、開発コストが高過ぎるため、次々に撤退しています。治験にも時間がかかり過ぎ、日本の医薬品の競争力を低めています。その結果、バイオテクノロジー分野などの発展が遅れ始めています。

 医療も農業も、高コスト体質につながる規制や制度をドラスティックに緩和し、参入障壁を取り払わないと、新しいビジネスモデルの誕生といった変化は期待できません。

 もう1つ、中小零細企業の問題に絡めてお話すると、かつてM&Aには「買収」「乗っ取り」といった悪い印象がありました。しかし最近、中小零細事業者の間では、そのイメージが変わりつつあります。企業を売る側はハッピーな余生を送り、買い取った側は商権や技術を有効に活用できる。M&Aビジネスは非常に伸びています。農業者も、新しいアイデアやビジネスモデルを持つ人たちに事業を継承することを考えることが必要な時代でしょう。


一所懸命から一生懸命へパラダイムの転換が必要


昆 農業の世界では「農地を守れ」という話もよく出ます。農家の本音は「この土地を手放したくない」ということであって、経営の継承を考えているわけではないのですが、土地にしがみつくのは日本人の文化意識なのでしょうか。

大塚 かつては金融もそうでした。土地本位制を続けてきた結果、バブル経済とその崩壊に見舞われたのです。高度成長期まで土地は産業メカニズムの基軸でした。
 しかし、今やそのメカニズムの変化が求められています。農業も同じではないでしょうか。

 今、求められているのは「一所懸命」から「一生懸命」へのパラダイム転換ではないでしょうか。昔の武士や農民は「この土地を命をかけて守る」という意味で「一所」懸命という言葉を使いました。

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