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【土と施肥の基礎知識】
土の化学性(4)土の中でのリン酸の挙動
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第11回 2016年11月04日
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我が国の畑地の約半分を占める黒ボク土は、世界最高の土チェルノーゼムに匹敵する良質の腐植をたくさん含む土である。しかし、残念ながらリン酸肥沃度は世界一低いといっても過言ではない。まずは、その原因を説明するために黒ボク土のでき方を簡単に解説しよう。
黒ボク土は火山噴出物(火山灰)を原料(母材)とする特殊な土である。火山灰とは地下のマグマが噴火により空中に吹き上げられ急速に冷やされた非晶質物質(ガラス質)である。その成分は硬い岩石と同じようなケイ酸塩鉱物だが、粒径が細かく表面積が大きいのが特徴だ。厚く堆積した火山灰層に雨が降ると、火山灰中のカルシウムなどの塩基が溶けて、雨水はアルカリ性となる。
アルカリ性の雨が火山灰の中にしみ込むと、ケイ酸塩鉱物の屋台骨であるケイ酸が溶け出して、塩基だけでなくケイ酸までが溶脱される。このような化学反応が長く続くと、火山灰の中から塩基とケイ酸が減少して、相対的にアルミナ(酸化アルミニウム)の含有量が増加し、アロフェンと呼ばれる粘土鉱物を多く含む土ができる。これが黒ボク土である。
こうしてできた土はアルカリ性を示す塩基が徹底的に溶脱されているので、酸性が強いだけではなく、リン酸イオンと化学的に結合して無効化してしまう大量のアルミナを含む。このようなアルミナを活性アルミナと呼び、リン酸を無効化する現象を「リン酸の固定」という。これが黒ボク土のリン酸肥沃度が低い原因である。
なお、黒ボク土の色が黒い原因は、写真1のような黒ボク土の原野で生育するススキから供給される有機物が数千年ともいわれる長い年月を経て腐植化したためとされている。
アルカリ性の雨が火山灰の中にしみ込むと、ケイ酸塩鉱物の屋台骨であるケイ酸が溶け出して、塩基だけでなくケイ酸までが溶脱される。このような化学反応が長く続くと、火山灰の中から塩基とケイ酸が減少して、相対的にアルミナ(酸化アルミニウム)の含有量が増加し、アロフェンと呼ばれる粘土鉱物を多く含む土ができる。これが黒ボク土である。
こうしてできた土はアルカリ性を示す塩基が徹底的に溶脱されているので、酸性が強いだけではなく、リン酸イオンと化学的に結合して無効化してしまう大量のアルミナを含む。このようなアルミナを活性アルミナと呼び、リン酸を無効化する現象を「リン酸の固定」という。これが黒ボク土のリン酸肥沃度が低い原因である。
なお、黒ボク土の色が黒い原因は、写真1のような黒ボク土の原野で生育するススキから供給される有機物が数千年ともいわれる長い年月を経て腐植化したためとされている。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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