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【実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!】
第二十三章 投資の心構え(4)減価償却と負債償還計画のバランス
- 齊藤義崇
- 第23回 2016年11月04日
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最後の3つ目のポイントは、実際に投資のために負債の限度額を知っておくことである。投資限界額は以前にも紹介したが、年金現価係数を用いて求める。年金現価係数は、金融機関などで、投資分析の計算に用いられる係数で、平均利子率と機械・施設の耐用年数から一覧表で導くことができる。この係数に見込めるキャッシュ・フローを掛けることで、投資限界額を導き出せる。
この事例では平均的な減価償却費は350万円、平均耐用年数は約9年である。播種機だけでは、麦の生産はできないように、とくに土地利用型の経営では生産技術を体系で捉えたとき、一つの機械だけで生産できる作物はないといっていい。過去に購入してきた減価償却資産を総合的に捉え、一連の作業機の必要金額と耐用年数を平均でつかむことが重要である。当期純利益は600万円なので、当面のキャッシュ・フローは年間950万円と見込める。
平均耐用年数が9年で、平均利子率が2.25%とすると、係数は8.06571となる。キャッシュ・フローは950万円なので、投資限度額は7660万円となる。既存の負債残高が4300万円あるので、負債による追加投資は、概ね3300万円が限界の目安と考えられる。
この分析はあくまでも目安である。自己資本比率も60%に満たない事例農場では、いまは投資のときではない。利子率と耐用年数からの投資限界の算出額は、経営が不調でも最悪倒産はしない限界の額として、計算しておくものである。鵜呑みにしないように気をつけよう。
ここでは売上高がこのまま3500万円を維持できたなら、4年後の負債残高との差は1600万円である。つまり、4年後に1600万円の投資が可能になるというわけだ。負債で投資を行なうときには、投資の可否、頃合い、限度額の3つのポイントを押さえ、熟考してから実行に移しても遅くない。妥当かつ冷静な判断を心がけよう。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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