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トウモロコシのはなし

流通や肉牛生産・販売の立場から国産子実トウモロコシをどう考えるか


日本人はトウモロコシで
育った畜産物しか知らない

――日本では子実トウモロコシは家畜用の飼料として使用するのが望ましいのでしょうか?
山本 そうですね。これは食の歴史の問題だと思います。世界全体ではトウモロコシ生産におけるスイートコーンの割合は5%未満ですが、日本の消費者の大半はトウモロコシ=スイートコーンだと認識しています。そこからしておかしいでしょう。世界と日本では完全に文化が違うと言わざるを得ません。
現在国内では、コーンスターチとしての利用は一定数ありますが、コーングリッツは製品としてはあるものの、食品として日常的に使ってきた歴史がほとんどありません。トルティーヤなどのメキシカン料理ではよく使われる素材なので、昨今新しい需要として期待されてはいます。でも日本で今後大きな市場になり得るかというと、食のジャーナリストとしての立場から見て、爆発的なムーブメントになるとは思えません。グラノーラなども同じです。
穀物は文化の礎ですから、それを新たな食文化として根付かせるのは難しい問題です。日本はコメ文化圏といいながら、そのお米を食べなくなってきている主体性の薄い国ですが、トウモロコシ食が根付くかは甚だ疑問です。そうなると圧倒的に飼料用ですね。
――トウモロコシを食べる文化はありませんが、日本の飼料原料はトウモロコシが中心ですね。
山本 日本の畜産の歴史を紐解くと、最初から輸入ありきで始まっていて、国内で飼料用トウモロコシをつくっていたという事実はほとんど存在していません。海外からいきなり近代畜産が入ってきたからです。だから、濃厚飼料中心の管理になっていました。
ところが世界で見ると必ずしもトウモロコシが飼料原料とは限らないわけです。その地域で生産しているものを飼料とするのが原則で、イギリスだと牧草、フランスだとマイロ(コーリャンとも呼ばれる)や亜麻、オーストラリアだと麦類が中心になる。それぞれ飼料によって肉質、味が全然違います。日本だけが自国で生産していないトウモロコシを背伸びして買って与えて、それを日本の「伝統的な畜産物の味」として売ってきたわけです。
味覚という点でいうと、日本人はトウモロコシで育った畜産物を食べ慣れ過ぎていますよね。トウモロコシで育った畜産物しか食べたことがないと言ってもいい。残念ながらこの嗜好を変えるのは難しいでしょう。
そういう嗜好の背景を考えると、国産畜産物を支えるという意味でもトウモロコシの国産化はある程度は実現してほしいですね。現状の流通では、生産、流通、消費それぞれが考えていることが全部噛み合っていないようですが、そこの問題がクリアできれば十分売れると思います。

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