記事閲覧
担がれた進次郎
骨太PTで生産資材価格問題の議論を重ねても、ついに全農から満足な回答を引き出すことはできなかった。それは全農だけが悪いのではなく、進次郎の攻め方が悪かったということに総括できる。グランドデザインの欠如というほかに、進次郎が提出させた資料は、その大半がデタラメな内容だった。そのためか、多くの議論が乱雑というか上滑りの印象を与えた。農業機械で説明してみたい。
罪作りなのは、日本農業法人協会だ。この協会はプロ農業者の集まりと自称するが、補助金依存の赤字農業集団でしかない。その連中が、生産資材価格問題について進次郎に提言したというから驚きだ。無責任なアドバイスで進次郎を右往左往させた。韓国へ現地調査に赴いてまとめた報告書は、プロとは言い難いズサン極まる内容。最初から進次郎の意向に沿うよう結論先にありという代物。農業機械が好例。
「(韓国製の)クボタと韓国メーカーを比較すると、トラクターが26~36%、コンバインは38~49%、韓国メーカーが安い」
韓国製トラクターは、日本の排ガス規制に適合しない旧式エンジンを搭載している。日本農業法人協会はこのことに気がつかなかった。輸入するとなると、エンジンを国内規制に合わせる改造が必要なため、かえって高くつく。じつは、新潟で韓国製トラクターを輸入していた業者がいた。電話で聞いてみると、やはり改造コストなどで輸入の取り扱いを2年前からやめてしまっている。
これが漫画的なのは、調査に携わった農家が、韓国製トラクターが安いと進次郎に吹き込んでおきながら、誰一人として韓国製を使っていないことだ。進次郎はこの連中にまんまと担がれてしまったのだ。担いだ面々は、進次郎にすり寄ることで、補助金の恩恵に与ろうとしているのだろうか。進次郎より、この輩の方が役者は一枚上手だ。
「農薬の価格差、農協内で最大2倍」に「調査が必要」と大見得を切った進次郎、ついに振り上げた拳を下ろせなくなった。いい加減にしてほしいのは、進次郎の肝いりで農水省が予算を組んだ生産資材価格の「見える化」事業だ。農業版「価格ドットコム」という触れ込みだ。すでに補正予算で5000万円を要求している。なんのことはない、進次郎の面目を保つため、農水省が配慮した無駄な予算だ。
それだけ「見える化」が必要と主張するなら、税金を使わずに進次郎が自身のブログでやったらどうだろうか。(文中敬称略)
会員の方はここからログイン

土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
ランキング
WHAT'S NEW
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2020/08/07)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2019/12/12)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2018/12/25)
