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人生・農業リセット再出発

APAホテル飛翔の軌跡


なぜ快進撃が可能になったのか? 一般的なシングルルームは15平方mだが、APAは客室数を増やすため11平方mと狭い。新宿歌舞伎町タワーは620室もあり、他社より3割も多く詰め込んだ。供給力が高い分、収益力も半端じゃない。部屋の広さより快適性を最優先させる。ベッドは140cmワイドと安眠枕の贅沢、TVも50インチの大画面、枕元にスイッチをそろえた。部屋を明るくしてユーザー本位の設計にこだわった。天井は低く部屋も狭いので空調経費は節約でき、部屋の卵型浴槽はゆったり入れるが、容積2割減、空気を混ぜた高水圧シャワーで節水し、遮熱カーテンやLED電球採用で二酸化炭素排出量を3分の1に抑えてコスト削減を徹底。「5%CLUB理論」(注)でターゲットを絞った。できるサラリーマンには「時は命なり」。会員になれば記帳不要のチェックインで、チェックアウトは前精算だからキーカードを回収箱に入れるだけ。それにキャッシュバック制がある。累計5万円に達したら目の前で5,000円の現金が手渡される。そのお金を会社に戻す人はいない。その囲い込み会員数1,100万人! 売上高に占める営業粗利益30%が採算の良いホテルとされるが、APAは70%を上回り、投資回収期間は他社の半分以下の10年未満と言う。
元谷さんは石川県小松市出身。木工所経営の父親が肺結核で亡くなったのが14歳のとき。6人兄弟の長男だったので家族の面倒を見ながら奨学金で高校を出ると地元の小松信用金庫に就職する。当時まだ珍しかった住宅長期ローンを活用して注文住宅販売で大成功。広告も「本日発売開始」ではなく、数カ月前から「あと何日で発売」とTVであおる前宣伝で大成功。27歳で脱サラしてAPAを興す。
APAとは、always pleasant amenity(いつも気持ちのよい環境を)の意味。創業以来、一度も赤字はなく、リストラもゼロ。APAはビジネスホテルではなく、進化した新都市型ホテルだとか。過剰なサービスをなくして必要最低限の快適性・利便性を追求する。新参者に他社との軋轢は付き物だが、ここまで突出すれば「出過ぎる杭は打ちにくい!」となる。今後の課題は、安価だったAPAが一流ホテル並みの価格で強気になれば、どこまで客層がついてくるかだろう。元谷さんは言う。
「過去は暗記できても未来は暗記できない。洞察力を磨け! 勝兵はまず勝ちてしかる後に戦いを求める。勝軍は開戦前にまず勝利を得てから戦争をしようとするが、敗軍は戦争を始めてからあとで勝利を求める」

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