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現在の会員農家は15軒。昨年よりは1軒減った。高齢化のため、車の運転がおぼつかなくなったためだという。
「お客さんからの声は、生産者にとっては大きな励みとなっています。それが野菜をつくる楽しみでもありますね。朝市で買った野菜を切って食卓に出しただけなのに、ご主人から料理の腕が上がったといわれた、なんて話を聞いたときは、ほんとうれしくなりました。私たちは野菜を扱うプロとして、一歩進んだ提言を心がけています」
母が30年前に
始めた自宅前直売
三橋は地元で数百年続く旧家の長男として生まれた。22代目伊右衛門。
自宅兼作業所は茅ヶ崎市内北部、JR相模線香川駅近く、相模一宮・寒川神社が有名な寒川町と境を接する地区にある。敷地内には屋敷林ともいうべき巨木がいまも残っていた。なかでもシイの樹は幹回り数メートル、樹齢約400年とか。
住まいから1kmほど離れたところには、築約200年の三橋一族旧家が解体移築され、茅ヶ崎市民俗資料館として寄贈されている。1970年ごろまで使われていた江戸時代後期の農家建築。この旧家の当主が伊右衛門といった。その名前が伊右衛門農園の由来ともなっている。サントリーのお茶「伊右衛門」よりはるかに古い。
現在の耕作面積は2町歩ちょっと。借地も一部あるが、大半は代々受け継いできた農地だ。首都圏近郊では「大規模農家」に属する。それでも宅地開発などで自前農地は減った。周囲はここ10年ほどでできた比較的新しい家屋が建ち並ぶ。畑はそんな宅地化地域のなかに虫食い状に点在している。水田も15aほどあるが、自給用もしくは縁故米だ。
父親の清一は、キャベツやトマトなど主に数種類の野菜を栽培し、地元茅ヶ崎市や隣接する藤沢市の青果市場などに出荷していた。農協出荷ではないものの、いわば普通の農家だった。
そんななかで、母・絹代が自宅前の道路脇で直売所を開く。三橋が小学校高学年のころというから、かれこれ30年近く前のことだった。といっても最初は、パラソルを立てて出荷できない割れトマトを袋詰めして売るだけ。よくある無人販売に毛の生えたレベルといっていい。農家の主婦の小遣い稼ぎかと思ったらそうではなかった。
「わたしの実家は花をやっていました。鉢植えなどです。実父からは、自分でつくったものは自分で値段をつけて売らなくちゃいけない、とよく聞かされていました。ところが嫁いだ家は、つくった野菜を市場に出すだけ。どこか物足りなさを感じていたんでしょうね。そこで始めたのが直売でした」
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三橋清高 ミツハシキヨタカ
伊右衛門農園
1977年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。大学卒業後、かながわ農業アカデミーで学びながら家業就農。近郊農家として多品目の野菜を栽培・直売している。2000年から15年まで「茅ヶ崎海辺の朝市」代表。2女3男の父でもある。両親のほか、専従スタッフ1名、パート1名。栽培面積約2ha(うち水田15a、借地50a)。昨年の売上は約2,000万円。
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