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100年かけてつくる
美しい街並み
金山は自然だけでなく、その街並みも美しい。しばらくして街に入ると、通りの両側に立ち並ぶのはしっくいの白壁に切り妻屋根が特徴の「金山住宅」である。私も全国各地を旅しているが、在来工法による住宅がこれだけの規模で広がっているのはちょっと記憶にない。これは地元の岸家の山林地主である岸宏一が町長だった時代に100年の計によって進められた事業である。
金山町は1983年に策定した「新金山町基本構想」で最重要プロジェクトに位置付けたものこそ「街並み(景観)づくり100年運動」。これは簡単にいえば、100年をかけて自然や風景と調和した街並みをつくるというもの。同時に地元で伐採した材木を使って、地場産業を盛り上げることを目的としている。
町はこのプロジェクトを推進するため、金山住宅の新築に最高80万円、車庫や小屋などの整備に最高30万円を助成している。
もちろん美しい街並みは住宅だけで構成されているわけではない。郵便局や銀行、学校に至るまですべてが木材を基調としたつくりになっており、いずれも金山住宅と調和した色彩が施されている。また散歩をして気づくのは水音である。街中を勢いよく流れる農業用水にはたくさんの鯉が泳いでいて、旅人の目を和ましてくれる。
これだけ魅力的な街並みを持っているのに、残念なのは商業が思うように育っていないことだ。飲食店や土産物屋はほとんど見かけない。おおむね観光客は街並みを散策した後、すぐに次の目的地に向かうだけである。かつては冬ともなれば街の北東部にある温泉施設を併設した神室スキー場がにぎわったが、いまは全国ほかのスキー場と同じように客足はさっぱりだそうだ。
そんな中で唯一といってもいいほど気を吐いている観光施設がある。今回の舞台である「四季の学校・谷口」(以下、四季の学校)だ。場所は金山町の中心部から車で10分ほど。典型的な過疎地ともいっていい、国道から奥へ奥へと入り込んだところにある山村に、なぜひっきりなしに人が訪ねてくるのだろうか。それが今回のテーマである。
すべて地粉の
名物「がっこそば」
国道から入り込んで車は山路をゆっくりと下り、やがて開けた場所にたどり着いた。すぐ左手の眼下には棚田が広がり、そこを見下ろす高台にぽつりと立つ建物が見えてきた。
到着したところはまさに学校そのもの。かつて校庭だったと思われる広場は駐車場となっており、その向こうに年代を感じさせる小さな木造建築の校舎が立っている。ここは20年前まで金山小学校の分校だったそうだ。ただし、いまではレストランになっている。正面玄関の木戸を開けた先は、旧小学校時代の講堂だろうか、その広いスペースにはテーブルがいくつも置かれている。さらにこの向こうに厨房がある。そこでは昼時だったため女性たちが忙しく働いているのが見えた。
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