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【土と施肥の基礎知識】
土の生物性
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第12回 2016年12月02日
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「土は生きている」といわれることが多い。確かにすばらしい表現で、土の不思議さや神秘さを感じる。
また、少量の土を密閉容器に入れ、一定時間後に容器内の空気を分析してみると、酸素が減り二酸化炭素が増加する。まさに土が呼吸をしているわけで、「土壌呼吸」が土壌学の専門用語にもなっている。この土壌呼吸量を測定することにより評価できるのは土壌中での微生物活性である。つまり、土が呼吸しているといわれる現象は当然、土の中に生息する動物や微生物の呼吸に伴うもので、土が生きているというわけではない。科学的に表現すれば、「土は生物を育む環境」ということになるだろう。
土の中に生息する生物は土壌動物と土壌微生物に大別される。まずは、そのあたりから土の生物性を解説することにしよう。
土の中には種類や大きさの異なる動物が生息していて、土壌動物学という専門の学問分野もある。土壌動物の分類法にはさまざまあるが、表1のように、大きさで分けることが最も実用的でわかりやすい。
巨形の哺乳動物から小形の原生動物までバラエティに富んでいる。原生動物のなかには葉緑素を持ち、動物と植物の区別が難しいミドリムシ(ユーグレナ)なども含まれるが、それ以外の土壌動物は有機物を摂取する従属栄養である。土に施された有機物を巨形動物のミミズが食べると、その80%を粒状の糞土として排出する。それを大形動物のダンゴムシなどが食べ、その糞を中形動物のダニ(写真1)などが食べることにより、土の中での食物連鎖が起こり有機物が分解・細断されて、次の微生物分解に引き継がれる。
土の中に生息する生物は土壌動物と土壌微生物に大別される。まずは、そのあたりから土の生物性を解説することにしよう。
2.土壌動物の種類と役割
土の中には種類や大きさの異なる動物が生息していて、土壌動物学という専門の学問分野もある。土壌動物の分類法にはさまざまあるが、表1のように、大きさで分けることが最も実用的でわかりやすい。
巨形の哺乳動物から小形の原生動物までバラエティに富んでいる。原生動物のなかには葉緑素を持ち、動物と植物の区別が難しいミドリムシ(ユーグレナ)なども含まれるが、それ以外の土壌動物は有機物を摂取する従属栄養である。土に施された有機物を巨形動物のミミズが食べると、その80%を粒状の糞土として排出する。それを大形動物のダンゴムシなどが食べ、その糞を中形動物のダニ(写真1)などが食べることにより、土の中での食物連鎖が起こり有機物が分解・細断されて、次の微生物分解に引き継がれる。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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