記事閲覧
従来、水稲単作地帯では春一番の農作業として「荒起こし」を行なっていた。水田の作土を反転することで、下層に生息していた嫌気性細菌が空気にさらされて死滅し、好気性微生物の分解を受けてアンモニア態窒素が生成される。このような土を乾かすことで窒素が無機化する現象を「乾土効果」と呼ぶ。肥料がなかったころに農家が見いだした生活の知恵である。
最近では、作物の連作障害を回避するため薬剤による土壌消毒のほか、太陽熱消毒や土壌還元消毒も行なわれているが、それにより多くの土壌微生物が死滅する。生き残った微生物がそれらの死菌体を分解する際にアンモニア態窒素が生成するので、次作の基肥、とくに窒素量を減らす必要がある。また、土壌消毒は地力消耗作業でもあることを肝に銘ずるべきだ。
5.共生菌と土壌病原菌
土壌微生物のなかには悪玉菌ともいわれる土壌病原菌と、役に立つ共生菌が共存している。共生菌には、マメ科植物の根に共生する根粒菌や水田のアカウキクサの葉に共生して空中窒素を固定するラン藻などがある。また、多くの植物に共生する菌根菌は土の中でリン酸の吸収を助けるなどの役割を果たすが、日本の農耕地のように肥沃度が高まった畑や水田では、共生菌の効果を期待することは難しい。
土壌病原菌が引き起こす土壌病害の発病要因とその対策については応用編で触れる。
会員の方はここからログイン
後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
